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最終更新日:2010年3月6日
那覇事務所 |
平成19年4月22日(日)、農畜産業振興機構那覇事務所は、粟国村役場、JAおきなわ粟国支店との共催により、粟国村において「さとうきびの日」の行事として地域情報交換会を開催した。
今回の地域情報交換会では、さとうきびほ場での現場指導と栽培技術等の講演会が行われ、生産農家をはじめ、糖業関係者、行政関係者など約30人が参加した。
粟国島の概況
粟国島は、那覇の北西約60kmに位置し、一島一村で構成された島で、面積は約7.63kuである。地域農業の主体は、さとうきびをはじめ、もちきび、肉用牛などであり、作物別作付面積では、さとうきびが第一位で、全体の33%を占める。(平成16年)
1.ほ場における現場指導等
JAおきなわ 島袋正樹さとうきび生産振興アドバイザーにより、「今すぐできるほ場対策」と題して以下の指導が行われた。
[指導内容]
島袋氏による熱のこもった解説 |
ほ場現場指導の様子 |
2.プラソイラを用いた深耕の実演
(JAおきなわ粟国支店)
硬盤の除去、土中の空気・養分の増加、根の発育促進の効果がある深耕作業の実演が行われた。
プラソイラによる心土破砕の実演 |
3.講演会
「ベイト剤を用いたハリガネムシの防除」
(沖縄県農業研究センター病虫管理技術開発班 新垣則雄主任研究員)
さとうきびの増産については、春植・株出の推進が重要であるが、ハリガネムシ等の土壌害虫の影響により株出栽培が非常に少ないことから、粟国村では夏植栽培が中心である。今般、ハリガネムシの防除に有効な農薬「ベイト剤」が開発されたので、その効果や使用方法について解説していただいた。
[講演要旨]
※ハリガネムシに対する新しい農薬「ベイト剤」(BASFアグロ社開発の粒剤)とは、
フィプロニル(殺虫成分)0.5%+穀物粉砕物(ハリガネムシの餌)で構成されている薬剤で、市販されているベイト剤の例として、「コンバット」や「アリの巣コロリ」などの商品があり、さとうきび害虫用は今年の夏植え時から発売を開始される予定で、効果が期待されている。
(「ベイト剤」の詳細は、当機構サイト『生産地から』2007年6月「新しいタイプの農薬、「ベイト剤」を用いたさとうきび害虫ハリガネムシの防除」参照)
○ベイト剤効果試験の解説
新垣主任研究員 |
新垣氏の講演 |
「今すぐできる増産技術」
(JAおきなわ 島袋さとうきび生産振興アドバイザー)
4月から夏植時までの期間に必要な増産に結びつく作業について講演をいただいた。
[講演要旨]
生産量は、単収×収穫面積で決まるが、
○単収向上には、(1)適期植え付け (2)株数確保 (3)原料茎の確保を考えることが必要。
○収穫面積の拡大には、(1)夏植収穫後の株出栽培によって夏植用苗の確保を図ること。
(2)春植・株出栽培を推進し、土地利用効率の向上を図ること。
(3)株出栽培においては、施肥・中耕・雑草防除等の株出管理を徹底することが重要。
○株出栽培における萌芽期の留意点としては、枯葉除去+施肥+除草剤が大切で、この3点がセットの技術ということである。
○夏植における植え付け時の留意点としては、夏植時期の降雨が台風とセットであることから、台風による降雨の前に苗を準備し、台風後に植え付けを行う。
○土壌害虫防除の徹底(ハリガネムシ等)が重要で、その防除法として「ベイト剤」や「交信かく乱法」などがある。
講演会場の様子 |
4.アンケート結果
現場指導や講演会について、大多数の参加者から「大変参考になった」または「参考になった」と回答を得た。
(感想の一部紹介)
第31回(平成18/19年期)沖縄県さとうきび競作会表彰式 (社団法人沖縄県糖業振興協会主催 那覇市)
沖縄県では、県民がさとうきびの重要性についての認識と理解を深めるために、毎年4月の第4日曜日をさとうきびの日と定めており、県内各地でさまざまな催しが行われる。
さとうきび作農家等の生産意欲の高揚による生産振興を進め、沖縄糖業発展の一助とするため、社団法人沖縄県糖業振興協会の主催
で毎年さとうきび競作会が行われており、31回目となる今年は4月27日(金)に沖縄産業支援センター大ホールにおいて表彰式が開催
された。
なお、今年から、多量生産部門の農家1位および生産法人1位に対して、当機構から理事長賞を授与することになった。
受賞者の顔ぶれ |
当機構理事長賞の授与 |
受賞者代表あいさつ |
○競作会の審査
競作会の審査は、まず、各市町村が関係者の意見に基づいて各地区(沖縄本島(北部、中部、南部の各地区)、宮古、八重山の5地区)の優良事例調査委員会事務局に推薦し、それを受けた同事務局が予備審査(立毛調査)を行い、各地区2点以内を選定して沖縄県さとうきび優良事例調査委員会事務局に推薦する。さらにその結果に基づいて全刈審査等が行われ、最終的に1位から3位が決定されることとなる。
今年各地区から推薦された優良農家の圃場は計8点、多量生産の部については計10点であった。
○平成18/19年期の生産実績
平成18/19年期の気候は、平成17年9月から18年2月にかけては気温がやや高めで降水量が少ない傾向であり、平成18年3月から4月の気温は平年並みであったが、5月以降、収穫期まで高めの気温が続いた。台風13号に伴う潮風害や少雨等により、さとうきびの生育も停滞するなどということがあったが、さとうきび増産対策等の効果もあり、最終的な生産量は741,284t(対前年比9.1%増)、平均単収は5,848kg/10a(同7.5%増)、甘蔗糖度は14.6%(同1.0%増)と、いずれも前年度を上回る結果となった。
○受賞者の紹介
《農家の部》
1位 農林水産大臣賞
南部地区代表(八重瀬町) 神谷 直幸
神谷直幸氏 |
2位 農林水産省生産局長賞
南部地区代表(南城市) 親川 洋子
親川洋子氏 |
3位 沖縄県知事賞
宮古地区代表(宮古島市) 勝連 栄一
勝連栄一氏 |
《多量生産の部》
【一般農家の部】
1位 独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞
南大東村 平安座 賢二
平安座賢二氏 |
【さとうきび生産法人の部】
(有)久豊会 |
他にも表彰された農家は多数おり、今回紹介したのは一部の農家である。地域の模範的存在として、地域のさとうきび生産に大いに貢献している優良農家の皆様には心より祝意を表したい。
また、競作会の表彰式のほかに、記念講演として、JAおきなわさとうきび生産振興アドバイザーの島袋正樹氏による「これだけやれば増産につながる重要農作業」という演題で講演が行われ、夏植、株出の地域での増産対策や施肥技術、病害虫対策についての講演が行われた。(新田)
島袋正樹氏 |
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