[2006年4月]
【調査・報告〔砂糖/健康〕】
安田女子短期大学保育科
広島修道大学人文学部
広島大学教育学研究科 |
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非常勤講師 加藤 佳子
教授 今田 純雄
教授 森 敏昭 |
本研究は、甘味に対する態度がどのように形成されていくのかを明らかにすることを目的としたものである。
実験では、4歳から17歳の園児、児童、生徒ならびにその保護者に対して、甘味に対する態度などに関する複数の質問項目について回答させ、それについてパス分析(先行研究・相関係数などから対象となる要因間の関係を表すモデルを仮定し(2変数以上)、これに基づき予測・説明関係の強さを推定する分析方法)を行った。
以下、その結果と考察について要旨を紹介する(
詳細版については当機構のホームページに掲載)。
本研究の結果
1. 甘味に対する否定的な態度、肯定的な態度は、幼児期から青年期を通じて形成されていくことが明らかになった。子どもの甘味に対する肯定的な態度は、保護者の甘味に対する肯定的な態度が直接影響するのではなく、甘味に関する養育態度を介して間接的に影響する。一方、子どもの甘味に対する否定的な態度は、保護者の甘味に対する否定的な態度が直接関係していた。
2. また、女子大学生に見られた食行動の異常傾向の予測変数である甘味に対するアンビバレント(肯定的・否定的な感情を同時に持つこと)な態度は、幼児期から高校生の発達段階でも説明力は弱いものの過食と因果関係が認められた。
3. 子どもの食行動を形成する上で強い影響をもたらすと考えられる保護者の養育態度と子どもの甘味に対する態度、食行動の問題について検討した。その結果、子どもの食行動の問題の背景には、兄弟の数、一般的な養育態度のあり方が影響していることが示された。具体的には一般的な養育態度のあり方は、甘味に関する養育態度や子どもの食生活への配慮を通して子どもの食生活に反映され、結果的に子どもの食行動の問題へと結びついていると考えられる。保護者の養育態度を背景とした子どもの食生活を考える上で、甘味をどのように位置付けるかが子どもの食行動の問題を考える上では重要な視点となる。
考察
本研究で甘味に対する嗜好の形成過程を検討したことで、子どもを養育していく上で甘味物質の代表である砂糖をどのように位置付けるか、一定の示唆を得ることができたと考えられる。生来、人は生理的な理由から甘味に対して受容的である。それゆえ甘味に対してメリット感を持つ、そしてメリット感は、再び甘味に対する嗜好を導く要因となる。同時に現代人は、高栄養時代を背景として甘味に対する否定的な認知、感情、行動傾向を獲得する。
しかし、甘味に対する肯定的な態度、否定的な態度の両方を強く持つことは食行動の異常をきたす要因となる。つまり、健康な食行動を身に付けるには、甘味に対するアンビバレントな態度の形成を回避することが必要である。
本研究から甘味に対する肯定的な態度、否定的な態度がどのように形成されるか、その一端が明らかとなったので、今後は食教育や保護者に対する啓蒙教育にこの内容が反映され、国民の砂糖に対する態度がバランスの取れたものとなり、健康な食生活が営まれることが期待される。