[2006年6月]
【今月の視点〔海外/糖業〕】
調査情報部 |
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部長 加藤 信夫 |
国際情報審査役付 |
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審査役 岡崎 裕司 |
調査情報部 |
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課長代理 竹中 憲一 |
ブラジルにおける砂糖およびエタノール関連調査結果については、6月号でサンパウロ州、パラナ州での現地調査、7月号でリヒト主催のセミナーを2回に分けて報告する。なお、当機構のホームページでは既に全体版を掲載しているので、参照願いたい。
はじめに
ブラジルは世界最大の砂糖生産・輸出国であり、さとうきびから生産されるエタノールの生産・輸出も世界最大である。このため、ブラジルの砂糖やエタノール生産および国内需給の動向は、砂糖の国際需給および相場に大きな影響を与える。
最近、原油高の影響を受け、また環境保護の関心の高まりも相まって、ブラジル国内だけでなく、国際的にもエタノール需要が増大しており、さとうきびから生産されるエタノールは砂糖の国際相場にも大きな影響を与えている(2006年2月の砂糖のニューヨーク現物相場の月平均は18.93セント/ポンドで、昨年同月と比べると80%高)。
また、原油価格高騰の砂糖相場への影響は以前と比べると強まってきており、このように砂糖価格はエタノール生産や原油価格の動向にも左右されており一層複雑化している。
このような状況の下、平成18年3月22〜23日の日程で、サンパウロ市においてリヒト主催のセミナー「Sugar and Ethanol Brazil」が開催されたことからこれに出席し、直近のブラジルなどの砂糖とエタノールに関する情報を収集した。併せて、昨年6月に実施した同国の砂糖およびエタノールに関する現地調査のフォローアップとしてUNICA(サンパウロ製糖協会)やブラジルで2番目のさとうきびおよびエタノール生産州であるパラナ州にあるCOCAMAR(コカマール農工業協同組合)のエタノール工場などを訪問したので、当該セミナーと現地調査の結果を以下のとおり報告する。
〔要約〕
1.リヒト主催のセミナーの参加者の説明にもあったように、原油価格と砂糖相場は従前と比べ、より密接な関係になっている。すなわち、原油価格の上昇のペースに引きずられるように砂糖相場も上昇する傾向が強まっている(図1)。
2.このような中、原油価格の高騰のみならず、京都議定書での義務の履行や環境面での配慮から、さらにはブラジルにおけるフレックス車の爆発的な普及(新車販売台数の7割強)も相まって、化石燃料の代替としてエタノールを中心としたバイオマス燃料の需要は今後も継続的に高まることは間違いないであろう。
3.燃料用エタノールの世界的な需給構造は、世界最大の供給力を誇るブラジルでさえも国内需要が第一に考えられており、世界生産量の約8%が国際貿易されているに過ぎない(ただし、ナイジェリア等のアフリカ諸国、カリブ諸国等の多数の国でエタノールの生産が行われている)。
4.昨年夏の米国での包括エネルギー法の施行など、世界的な供給面で明るい材料は散見されるが、現時点で安定的にエタノールを供給できる国はブラジルしかないと言っても過言ではない。
5.一方、砂糖についても、アジアを中心とした開発途上国での需要増、エタノール需要の増大、主要生産国での生産量の伸び悩みから、歴史的な低在庫率に陥っている。しかも、EUの砂糖改革による今後の精製糖の国際貿易量の減少が懸念されている。
6.ブラジルには約9,000万ヘクタールという農業に適した未開発地が存在すること、エタノール生産工場の新設や主要輸出ターミナルにおける貯蔵施設や搬入施設増設計画、さらにはパイプライン建設等の計画が存在すること等から、ブラジルの関係者は例外なく同国における今後のエタノールや砂糖の供給を楽観視している。
7.一方で、冷静にさとうきび、砂糖、エタノールの生産関連のデータを追ってみると、われわれはブラジルの関係者とは意見を異にしている。すなわちわれわれとしては、ブラジルのエタノールや砂糖の供給力は、今の生産工場の新設や輸送インフラの投資の効果が現れるまでのここ数年間は不十分な状況にあるのではとみている。 また、政府レベルでのエタノールの在庫措置がないことも安定供給の面では不安材料となっている。
8.われわれは、インフラ整備や政策面での支援の重要性は否定しないが、ブラジルにおいてはエタノールや砂糖の製造原料であるさとうきびの生産がなんと言ってもカギとなるとみている。ここ数年間のさとうきびの年間増産量は2,000万トン程度で、昨年も干ばつの影響を受け10万トン程度の増産にとどまった(UNICAによれば増大するエタノールと砂糖の需要を賄うためには毎年3,600万トンの増産が必要)。
なお、今回のパラナ州の調査で、肉用牛の生産の効率化から放牧地がさとうきびや大豆生産に転用されているとの話を聞いたが、全国ベースの作付面積を含む生産構造にかかるデータがないため、具体的な検証は現時点でできていない。
9.昨年10月頃からのエタノール供給不足から生じたエタノール価格高騰に対しブラジル政府は、エタノールのガソリンへの混合率を25%から20%に引き下げ、さとうきびの収穫を2ヶ月の前倒し、エタノールの輸入関税を暫定的に無税とする対策を実施(本年2月22日)した。今後ブラジルは、このようなエタノール供給不足を教訓に、エタノールの安定的な増産に取り組んでいかなければならないことになる。
10.いずれにしても、今期のさとうきびの収量がどの程度回復するかが今後の砂糖やエタノールの需給上大きな意味を持つ。
11.バイオマス燃料の需要増大を受け、さとうきびのみならず、とうもろこし、小麦、ビート、菜種、キャッサバ、林産物等、さまざまな農産物からのエタノール生産のための研究や実用試験が世界各国で行われており、これらの動きは砂糖だけでなく飼料価格(ひいては畜産物価格)にも影響を与え得る。
12.エタノールの生産技術はすでに確立されていると言ってもよいため、今後のエタノール生産振興を左右するのは、各国でのエタノール生産や利用面の政策と投資(先進国の投資家による途上国への投資など)である。
13.農畜産物の需給安定を担う当機構としても、エタノールやそれを取り巻くエネルギー情勢は農畜産物の需給や価格に影響を及ぼすことが明らかにされつつあることから、今後とも、これらの動きをしっかりフォローして、タイムリーな情報提供に努めて参りたい。
1.ブラジルにおける砂糖・エタノールの最近の情勢
<UNICA(サンパウロ製糖協会)での聞き取り>
1.エタノール価格の高騰
(1) エタノール価格の高騰の原因
昨年のさとうきびの収穫が予定を下回ったことが原因である。その原因は深刻な干ばつ(特に北東部)であり、パラナ州北部、サンパウロ州北西部、ミナス・ジェライス州南部で予定どおりの収穫ができなかった。干ばつは、さとうきびだけではなくとうもろこしや大豆にも影響を与えている。これにより、さとうきびの収穫は400万トンくらい減っているかもしれないが、ブラジルにとって400万トン程度の減収は大きな影響ではないとみている。また、エタノール価格はさとうきびの端境期に入ったため上昇している。
その他の要因はフレックス車の需要増である。昨年は年間の新車の販売台数(バス・トラック含まず)の50%がフレックス車であったが、2006年2月時点では月間販売台数の77%を占めるに至った。これはブラジル自動車工業会(ANFAVEA)の予想を大きく上回っている。また、自動車の相当数の所有者がフレックス車対応に改造していることも要因の一つとなっている。改造は整備工場で市販のキットにより簡単に改造できるが、その改造車の数は把握できない。
(2) ガソリンへのエタノール混合率を25%から20%に下げた経緯(本年3月1日から実施)
さとうきびの生産減による「自然な結果」である。その混合率の緩和はUNICAが政府に要請をして、業界との相談の上、砂糖・エタノール各省連絡評議会で決定された。砂糖・エタノール各省連絡評議会は砂糖・エタノールに関わっている4大臣が参加しており、エタノールの混合割合を決定する最高機関となっている。
これにより毎月1億リットルのエタノールの節約となる。
(3) エタノール価格の高騰への対応
今期は高騰した価格を冷やすため、収穫時期の前倒しを決めた。これはUNICAと政府が合意をし、UNICAのメンバーに対してできるだけ早期に収穫するよう勧告を行った。UNICAの会員であり、かつ前倒し収穫ができるUSINA(砂糖・エタノール生産工場)からは協力を得た。またパラナ州はUNICAの会員ではないが、2ヶ月の収穫の前倒しを行い、3月1日から収穫を開始した。
かつては中南部でも圧搾時期は5月1日ぐらいが一般的であったが、品種改良により4月半ばまで早まっている。3月20日現在で中南部地域の10社程度がすでに収穫を行っており、4月半ばには8割の工場が稼動するだろう。
2.USINAでの砂糖とエタノールの生産比率
直近ではエタノール52%、砂糖は48%の比率となっている。砂糖とエタノールの配分比率は単純に砂糖とエタノールの相場をみて決めるのではなく、一定の方程式のようなものはない。このことはペトロブラスなど利用者からみれば不思議なことであるが、USINAも含めていろいろ議論した結果である。
まず、USINAの中には、さとうきびから砂糖とエタノールを自社生産している者もあれば、エタノールを専門に生産している者などがあり、砂糖とエタノールの生産能力もまちまちである。加えて、国内外の砂糖、エタノールの需給、流通業者の関与がある。
砂糖の3分の2、エタノールの85%が国内で消費されており、国際市場よりも国内需要との関係が深く、国際価格と必ずしも連動しているわけではない。一方で、輸出向けは短期的、中期的に契約されており、輸出価格は「契約」によって決定されていることもある。さらには、輸出向けには政府の融資があり、エタノールは燃料向け以外の用途もあって、さらに複雑化している。
USINAは約350社あるが、そのうちの約200の企業グループが具体的な方針や販売政策などを設定して熾烈なマーケット争いを展開している。中でも中南部は地域内の企業間の熾烈な争いの他、国内向けではなく主に輸出向けにエタノールを生産している北東部との争いもある。
このように多数のさまざまな要因が複雑に絡み合っているので、一定の方程式や単純な経済モデルで砂糖とエタノールの生産配分が決まるわけではない。結果的にほぼ50対50になっている。
3.サプライヤーについて
サプライヤー(USINAへさとうきびを供給する者)は、ほとんどが「個人」(自然人)であるが、パラナ州やサンパウロ州の多くは協同組合方式の形態をなしている。サプライヤーの組合として「ORPLANA」があり、UNICAとはよい関係にある。
サンパウロ州には約1万のサプライヤーがおり、ブラジル全体のさとうきび生産量の約25%(約1億トン)を賄っている。全国のサプライヤーの平均作付面積は約20ヘクタールで、サンパウロ州には10万ヘクタールの者もいる。土地については、所有している者もいれば、借りている者もいるが、基本はさとうきびを生産している者である。
USINAとサプライヤーとの関係は、甲と乙の関係のようなものであり、USINA(甲)が条件(必要な生産量等)を指示し、サプライヤー(乙)と契約を取り交わす。契約は年契約もあれば月契約もある。
サンパウロ州の支払い方法は「CONSECANA」というルールがある。これは、政治的な要素を排除して、純粋にUSINAからサプライヤーへの支払方法などの経済的条件のみについて定めたルールである。具体的には、国内や海外の砂糖、含水エタノール、無水エタノール、など一定の価格について両者で合意をして結果を公表している。通常、合意価格の7割が前払いされ、糖度や市場価格を勘案し、残りの3割が後払いとなる。ただし、ルールは各USINAでばらつきがある。5年毎に見直しをしており、今年が見直しの年である。
(参考)パラナ州においてもさとうきびの価格は、「CONSECANA」により毎月決められている。さとうきびの糖度、その時の砂糖、エタノールの相場を反映して毎月決定される。毎月生産者と加工会社が集まり、パラナ州連邦大学教授が座長となり価格設定をする。3月の価格は、トン当たり37レアルである。
今回の収穫の前倒しについては、USINAとサプライヤー間で政治的要素も納得の上、実施している。なぜなら、通常の6月から7月に収穫したほうが糖度はよく収入もよいが、収穫の前倒しにより価格面で不利益を被ることになるので、契約上USINAとサプライヤーは価格で調整している。なお、対策として登熟の早い品種の導入を行っている。
4.新たな新設工場について
2006年には全国で19工場が、2007年には25工場が新たに建設される予定。その後、2008年から2010年にかけては45工場が建設予定となっている。
5.今後のさとうきびの規模拡大
さとうきびの作付面積は2010年までに、現在の550万ヘクタールに加えてさらに200万ヘクタール増やす計画である。2014年まではさらに100万ヘクタール増加し、現状より300万ヘクタール増加する計画である。ただしUNICA自身は具体的な面積増加のデータは持っていない(USINA単位の数字はある)とのことであった。
主に放牧地がさとうきび畑に転換されている。以前は1ヘクタールに牛一頭程度といった粗放牧により、畜産業にかなりの面積が使われていたが、現在では集約化してより狭い土地でも飼養可能となっていることから、余った放牧地がさとうきび畑に置き換わっている。
さらに、サンパウロの北西部、ゴイアス州で新規の事業者がでてきている。マット・グロッソ州、パラナ州、マラニョン州などの新興地域はさとうきびに適した土地であるが、インフラがないため伸びる可能性は小さい。また、北パラナより南は非常に寒く、北パラナがさとうきび作付けの限界とのことであった。
6.フレックス車の販売見込み
2月の販売台数のうち、77%がフレックス車(表1)であり、今年の末には90%に達すると自動車工業会はみている。トヨタとホンダも今年中にフレックス車をリリースするのではないか。ブラジルにとって日本車はあこがれの車であるが、今後はフレックス車を製造しなければ太刀打ちできないとのことであった。
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写真1 サンパウロ市郊外(MORUMBISHOPPINGセ
ンター内)にあるFIAT社の販売店に展示され
ていたフレックス車(SIENA)SIENAFIREFLEX(
1,000cc)で約140万円 |
写真2 フレックス(ガソリンとエタノール)と天然ガ
スのハイブリッド車のタクシー(ナンバーの下
にガスボンベが見える) |
表1 ブラジルにおける自動車販売台数(新車登録台数) (2005・2006年) |
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資料:ANFAVEA(自動車工業会) |
7.エタノールの輸入関税
ブラジルのComex(Chamber of Foreign Trade)は、国内のエタノール価格の上昇を抑えるため、エタノールの輸入関税を暫定的に20%から0%にすることを承認した(本年2月22日に実施)。
その他、インドは生産の不安定性等からエタノールの輸出能力はないとみている。ブラジルではエタノールを年間25億リットルの輸出をしているが、主な輸出先としては、米国、インド、韓国、台湾などが増えている。
8.ブラジルのさとうきび、砂糖、エタノールの生産・輸出状況
2004/05年までの生産と需要の概要は砂糖類情報2005年9月号に紹介しているので、参照されたい。
2005/06年におけるさとうきびの生産量は3.8億トンとなっており、(中南部:3.4億トン、北東部:0.5億トン)前年同となった(表2)。
表2 さとうきび生産 |
(百万トン) |
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出所:UNICA |
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表3 砂糖生産 |
(百万トン) |
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出所:UNICA |
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表4 砂糖輸出 |
(百万トン)
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出所:UNICA |
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表5 エタノール生産 |
(億リットル)
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出所:UNICA |
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表6 エタノール輸出 |
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出所:UNICA |
UNICAによればブラジルでは、今後の砂糖やエタノールの需要増に対応するために、サンパウロ州を中心に新工場の建設などの45のさとうきび振興にかかるプロジェクトにより、2010年には現行より1.8億トンのさとうきびの増産を見込んでいる。
ブラジルには農業に適した未開発地(森林や環境保護地域などを除く)が約9,000万ヘクタールもあることから、今後の需要増には対応可能だとしている。
しかしながら、2005/06年度のさとうきびの生産は前年より10万トンの増加にしかなっておらず、2010年までに1.8億トンの増産を図るための年間必要増産数量の3,600万トンにはほど遠い結果となった。2005/06年度は深刻な干ばつによってさとうきびの生産が伸びなかった。
さとうきびの生産が伸びなかった中、フレックス車の増加による国内需要の高まりや国際的なエタノール需要の増大から、さとうきびは砂糖よりエタノールに利用された。
砂糖の生産量は2,600万トン(中南部:2,300万トン、北東部:300万トン)で対前年比1%の減となった(表3)。一方、エタノールの生産量は157億リットルとなり、(中南部:144億リットル、北東部:13億リットル)対前年比3%の伸びを示し(表5)、エタノール輸出は25億リットルで、対前年比4%の伸びとなった(表6)。
世界的な砂糖需要の拡大による砂糖在庫の減少およびキューバやEUの砂糖産業の縮減により砂糖価格は高騰しており、エタノールも原油価格の高騰などにより高騰している。ブラジルでは国内のエタノール市場にさえ十分な供給がなされてない状況にある。
世界では、砂糖やエタノールの供給においてブラジルに期待を寄せているが、現状を見る限り、現実的にはブラジルの供給力不足は否めない。いずれにしても、今年のさとうきびの収穫量が注目される。
9.ガソリンとアルコールの小売り価格の推移
当機構が行ったサンパウロ市のガソリンスタンドにおけるガソリンとアルコールの価格調査結果は、表7のとおりである(2005年6月および2006年3月)。
2005年6月におけるガソリン価格の中間値は2.14レアルであり、アルコールは1.02レアルであった。一方2006年3月におけるガソリン価格の中間値は2.42レアルであり、アルコールは1.72レアルであった。
原油価格の高騰を受けて、2006年3月にはガソリン、アルコールとも価格が高騰しているのがうかがえる。ガソリンは2005年6月の価格と比べて13%上昇し、一方アルコールは69%の上昇となった。
また、アルコールとガソリンの価格比については、2005年6月ではアルコールはガソリンの47.7%であったが、2006年3月では71.1%となっており、ガソリンとアルコールの価格差は縮まってきている。
関係者によるとアルコールはガソリンと同等の熱効率を生み出ないことから、消費者がガソリンよりアルコールを選択する基準は、アルコール価格がガソリン価格の65%以下であるとのことであったので、現在、消費者がアルコールを選択するメリットは低くなっている。
表7 ガソリンスタンドでのガソリンとアル
コールの小売価格の推移(サンパウロ市) |
単位:レアル |
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注:( )は中間値 |
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写真3 サンパウロ市郊外にあるガソリンスタンドのアルコールとガソリンの価格(18年3月28日) |
1.エタノール・ターミナル(TEAS:Terminal Exportador de Alcool de Santos)
TIS(Terminal Intermodal de Santos)は異なる製品を扱う個別の会社で構成される組合(consortium)であり、製品(エタノール、液体化学品(エチレン、キシレン等)、植物油等)の受け入れ、貯蔵、輸出等を行っている。それぞれのメンバーはコスト削減とリスク・コントロール等の観点から、関連施設を共有している。そのうちのTEASはエタノールを専門に取り扱っている会社である。
全体の貯蔵能力は、11.2万m3で41のタンクを有する(そのうち、27タンクが化学品、エタノールは6タンク)。
(1) 概況
TEASは、中南部生産の無水・含水エタノールの貯蔵、取り扱いおよび輸出を行うターミナルである。また、サントス港でそしてブラジルで初めてのエタノールに特化した最初のターミナルでもある。鉄道又はローリーで運ばれてくるエタノールを24時間体制で受け入れている。
ターミナルの始動は2005年8月で、最初の輸出は2005年9月1日であった。営業開始から2006年3月20日までの貯蔵数量は17.5万m3、船積みは16.5万m3、受け入れローリー台数は4,500台にのぼる。
TEASは、CRYSTALSEV社、COSAN社、CARGILL社、NOVA AMERICA社およびPLINIO NASTARI社の5社のエタノールを扱っており、この5社で国内輸出量の3分の2を扱っている。
(2) 貯蔵能力等
5,000m3のタンクを4基、10,000m3のタンクを2基所有する。ローリーからタンクへは1時間当たり120m3で搬入。タンクから船へはパイプラインで搬送しており、船積み能力は1時間当たり700m3搬送できる機械を2基所有している。
年間のエタノールの取り扱い能力は100万m3で、これは2005年のサントス港からの全エタノール輸出量に相当する。1日当たりの受け入れ能力は、ローリーと鉄道でそれぞれ3,700m3である。
(3) 今後
エタノールの今後の需要増を見込み、2007年2月までに貯蔵能力を2倍にする計画が始動した。また、流通コスト削減のためにペトロブラス社と共同のパイプラインの建設を検討中である。
担当者によれば、エタノール産地が散在している中、それをいったん中間貯蔵施設に集め、パウリニアからパイプラインでターミナルまで運ぶのが望ましいと考えている。仮にパウリニアからサントス港まで390kmのパイプラインの建設ができると、1万6千台のローリーがフル活動したときのコスト分の削減になるという。パイプラン建設にかかる費用は所有者の自己負担となるが、政府からの税制面での優遇措置がなされるかもしれない。 その他の安価な輸送手段として河川輸送(conchas
river)も考えられる。
2.砂糖・ターミナル(COSANグループ)
(1) 概況
バラの砂糖を年間350万トン輸出しており、その5割はCOSANグループ傘下のUSINAで生産した砂糖である。その他、70〜80万トンの大豆と関連製品を輸出しており、全体としての輸出数量は年間430〜440万トン程度であり、輸出会社はSUCDEN社、Tate&Lyle社、コイメックス社、ノーブル社である。
主な輸出先の中ではロシアが最大であり、次いでカナダである。ロシアへはVHP糖を輸出し、カナダではTate&Lyle社が現地自社工場で精製している。その他、ナイジェリア、アルジェリア、エジプト、インドネシアに輸出している。
輸出される砂糖の種類は、VHP糖がほとんどである。以前は粗糖を輸出していたが現在市場のニーズはVHP糖であるため輸出していない。粗糖は現在北東部でもあまり輸出していない。ほかに「VHP+」という砂糖で糖度が99.6〜99.7%(SUCDEN社の特注で量は限定的)のものやオーガニック・シュガーも1万トン程度コンテナで輸出している。
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写真4 エタノールターミナル(TEASのプラットホーム) |
写真5 エタノールターミナル(TEASのエタノールタンク) |
(2) 港湾施設
埠頭の全長は240mで40フィートの深度。シップローダーは2基所有しており、搬入速度は1時間当たり1,000トンであるが、2基を新規増設予定であり、これにより搬入速度は2倍となる。
砂糖の倉庫は5つあり、全体で砂糖12万トン、大豆6万トン規模で常時保存可能となっており、サントス港で最大である。
具体的には、第5倉庫(65,000トン)、第10倉庫(18,000トン)、第15倉庫(55,000トン)、第20倉庫(30,000トン)、第23倉庫(20,000トン)で、8月までに45,000トンの倉庫(第28A倉庫)が完成する見込みで、将来23万トン規模となる予定である。
(3) 輸送方法
トラックと鉄道から荷降ろしができる。荷降機は1日当たり15,000トンの能力があるが、24,000トン荷下ろししたこともある。24時間稼働して、54,000トンの船積みをしたこともある。
砂糖は97%がトラック輸送。大豆はマット・グロッソ州から100%鉄道により運搬する。大豆の収穫時期はトラックが足りなくなり、運賃が上がるが数ヵ月後には冷える。輸送費も時期により変動する。将来は鉄道が有望であろうが、実現は80年後か(担当者私見)。ブラジルは長年鉄道に投資しないでいきなり民営化したために、個別の会社は資金難になっている。
大豆が100%鉄道なのは、マット・グロッソ州に生産の8割が集中していること、産地からターミナルまで長距離であること、燃料価格の高騰によりトラックの輸送費は鉄道に比べて4割くらい割高となっていること、から生産者がほ場まで鉄道をひいても割に合う。しかし、十分な鉄道網が整備されていないことが問題である。
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写真6 サントス港の外観 |
写真7 COSAN社砂糖倉庫 |
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写真8 COSAN社砂糖倉庫内のVHP |
写真9 COSAN社砂糖倉庫群の奥行き(全長約200メートル) |
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写真10 COSAN社のシップローダー(搬入速度は1時間当たり1,000トン) |
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(4) サントス港での他のターミナル
カーギル社、ADM社(大豆が主であるが、砂糖も取り扱い)、COPERSUGAR、NOVA AMERICA社がある。COPERSUGARとNOVA
AMERICA社は、シップローダーの能力から袋詰めとバルクの両荷姿に対応。当グループが袋詰めを扱わない背景としては、袋詰めの場合、2万トンを荷積みするのに6日間かかるが、バルクであれば同じ期間で20万トン荷積み可能であり、効率的だからである。
(5) ブラジルの主な砂糖の輸出ターミナル
サントス港以外では北東部のMaceioとRecifeがあり、前者の輸出量は6〜7万トンくらいではないか。船積み能力は1時間当たり1,500トン。Recifeには大きなターミナルはないと承知。輸出能力は北東部で130〜140万トン、中南部で1,200万トンであろう。当グループが砂糖の最大の輸出量を維持してきているが、最近ではカーギルが急迫している。
(6) 新たな投資
現時点で拡張計画はないが、契約に応じて対応する方針であるため、常に投資するのがCOSANグループの基本姿勢。最近2年間も投資してきており、新規事業所の開設や2005年には4つのUSINAを買収した。USINAは課税等の関係で経営は厳しいと思う。これらの投資により、砂糖は140万トンから230万トンに増産可能となる。
1.パラナ州におけるさとうきび栽培
さとうきびは、パラナ州(年間降水量は1,800〜2,000ミリ)の土地の2%、130地域で栽培されており、平均作付面積は35.64ヘクタール。最近は、放牧地670万ヘクタールからのさとうきび、大豆、とうもろこしへの転換が増えている(新規参入と規模拡大)。背景としては、畜産は地価高騰等により放牧密度(以前は1ヘクタール1頭程度)を高め、早期出荷(20ヵ月齢等で出荷)等の合理化により、余った土地が利用されている。
具体的にさとうきびの作付面積が増えている他州としては、サンパウロ州、パラナ州、ゴイアス州、マット・グロッソ州、北東部の大西洋側が挙げられる。ブラジルの作付面積は560〜600万ヘクタールで、2011年までに1,000万ヘクタールまで面積拡大する計画がある。
生産阻害要因としては干ばつがあり、2005年はパラナ州で3割の減収となった。ブラジルでは主に、さとうきびの内側から入る病害虫と根から入る二つの病害虫が悩みの種である。試験研究機関は2つあり、品種改良と土壌改良が主な仕事である。54名の研究員がさとうきびの品種開発(干ばつ抵抗性等)に従事している。主な品種の種類は3つあり、RB(パラナ州全域のメジャー品種群)、IAC(サンパウロ州が主)とCTC(COPERSUGAR社)となっている。なお、砂糖とエタノール向け品種の区別はなく、糖度が高ければそれでよいとのことであった。
(参考1)作付面積の推移
2004年 :35万ヘクタール
2005年 :41万ヘクタール
2008年予想:50万ヘクタール
(参考2)生産量
さとうきび:3,250万トン
バカス :1,100万トン
(参考3)ブラジルのさとうきび栽培地
中南部:サンパウロ州、パラナ州、ミナス・ジェライス州、ゴイアス州、マット・グロッソ州(灌漑の必要なし)。ブラジル全体のさとうきび生産量の3.8億トンのうち3.36億トンを生産。
北東部:伝統的栽培地(アラゴアス州、バイーア州等)であるが、道路事情が悪く地形が複雑で手作業が多いこともあり、生産性は低い。雨量が少ないので灌漑が必要。
(参考4)さとうきび・砂糖・エタノール産業の雇用力
直接雇用は74,000人(全国110万人)。間接雇用をいれると35万人(全国500万人)。
2.パラナ州における砂糖およびエタノール生産
1975年のプロアルコール計画発足に伴いエタノールの生産を開始し、その後1980年代の砂糖の規制改革を受け砂糖生産に切り替える。砂糖とエタノールの他、バカスを電力利用しており、一部、売電を開始。パラナ州の砂糖とエタノール生産は共に全国第2位である。
パラナ州の砂糖およびエタノール工場は全27工場でうち、9工場がエタノール専用、残り18工場が砂糖とエタノールを両方生産しており、中には日系人所有の工場もある。直近では、エタノール51%、砂糖49%を生産している。それぞれの工場の異なる生産能力の稼働率をフル稼働させることが最優先課題となっており(相場だけという単純な話ではない)、砂糖とエタノールの生産比率は、結果的に50%±5〜10%の変動幅に収まるようになっている。
砂糖は年間180万トン生産し、72%を輸出しており、一方エタノールは12億リットル生産し、2.5億リットル輸出している。2008/09年にはさとうきびの作付面積の増加により、10億リットルのエタノールを増産する見込み。
砂糖の輸送方法については、パラナグア港まで(480km)を鉄道(砂糖の55〜60%)又はトラック(残り)で輸送している。鉄道は民営化されたばかりであるが、トラック輸送に比べてはるかに安価で、一度に輸送できる量も多い(鉄道60トン、トラックは28〜30トン程度)。
また、パラナグア港ではパラナ港事業組合が砂糖専用のターミナル(バラ積み)を所有しており、他州生産の砂糖も受け入れている。昨年の輸出実績は220万トンで、今年中にエタノール専用のターミナルを所有予定。特徴は砂糖とエタノールのターミナルが独立していることである。
パイプラインについては、石油用はたくさんあるがエタノール専用は存在しない。エタノール専用パイプラインについてはペトロブラス社が計画しており、(1)パウリニアとサントス港、(2)ゴイアス州とパウリニア、パラナ州とパラナグア港間はその次の計画ではないか。
なお、クリチバ市のバスなどの公共交通機関の燃料にエタノールを利用し、ディーゼルと比べて汚染物質が4割削減された。
(参考1)さとうきび、砂糖、エタノール生産 |
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(参考2)砂糖とエタノールの生産コスト (サンパウロ州とパラナ州平均)
砂糖:160ドル/トン
エタノール:300〜310ドル/m3 |
3.COCAMAR(COOPERATIVA AGROINDUSTRIAL:コカマール農工業協同組合)
1.コカマールの概要
(1) 設立の経緯
1963年コーヒー生産者により設立。当時は世界最大のコーヒー産地として約2,000万袋がとれたこともあるほどで、これをまとめて加工して円滑な作業ができるように組織化を図ったことが発足の経緯である。現在では、常に先をみて製品に加工等を施して付加価値を高めるとともに、組合員への教育指導を実施している。
パラナ州では、他にも協同組合があるが(養鶏・養豚等)、コカマールのように多製品を取り扱っている組合は他にない。
(2) 概況
従業員数は3,400名で組合員数は6,500人(うち、さとうきび生産80人)。39の農産物受け入れ拠点をパラナ州北西部に持つ。
組織としては、Maringa市にある本部(敷地110ヘクタール)には、事務所、レクレーション施設、工場(大豆・とうもろこし等油、綿糸、マヨネーズ、果汁・大豆飲料、コーヒー等)、倉庫等があり、その他、エタノール工場(Sao
Tome市)とオレンジジュース工場(Paranavai市)を持つ。
売上げは、2005年で9.5億レアル(レアル高による輸出の目減り、大豆相場の低下等があった)、2006年には10億レアルを見込んでおり、果汁の一部は日本へも輸出。売り上げに占めるエタノール部門の割合は5%程度である。
(3) 組合員の資格
1年間コカマールと取引をすることが前提条件となり、その間銀行で経歴を調査する。その後の正式申し込みを受けてから、総務委員会で審査後に組合員の資格を付与する。会費負担は全取引額の1%。
組合員の7割は小規模生産者(「小規模」の定義は40ha以下)で、パラナ州北西部に在住しており、39拠点に200から250名の組合員がいる。組合員以外からも原材料を受け入れるが配当はなし。組合員の農業所得は正確には不明だが、年間8,000レアルくらいと思われる。
(4) 安全性について
最重要課題であり、各拠点にいる農業技術者等が播種から収穫までを現場で管理している。遺伝子組み換大豆は食用には利用していない。エタノールも組織上独立して品質管理を実施。ISO9001等の所要の認証も取得。種、苗、農薬、肥料等の生産資材は組合で一括購入。
(参考)COCAMARとCOPERSUGARとの違い
COPERSUGARとは、法人の協同組合で、39のUSINAの集合体。集合体であるが1業者であり、自己所有のUSINAはなく、各組合員所有。COCAMARは「個人」(自然人)による協同組合。
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写真11 COCAMAR(コカマール農工業協同組合本部) |
2.エタノール工場
(1) 経緯
1993年、パラナ州北西部シアノルテ地方のサン・トメ市にてプラントを買収してエタノールの生産を開始。2年前に砂糖生産の投資も考えたが、1,500万ドルの追加資金が必要なため断念。従業員数は1,200名。
(2) エタノール生産
年間7,300万リットルを生産し(24時間稼働)、2006年には2,000万リットルを輸出予定。現在は含水エタノールの需要が多いため含水エタノールしか生産してない。1トンのさとうきびからエタノールが82リットルできる。エタノール製造工程は以下のとおり。
(1) さとうきびの裁断
(2) 粉砕:糖汁とバガスに分ける
(3) 糖汁の糖度を95%に上げる
(4) 熱処理:105度で殺菌し、不純物を取り除く
(5) 発酵:タンク内で発酵(酵母を使用)
(6) 蒸留:不純物を分ける
(7) 製品
注:コントロール室ですべて全自動管理し、含水エタノールと無水エタノールの切り替えはスイッチで行う。
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写真12 パラナ州サン・トメ市にあるエタノール工場(年間7,300万リットル生産)の全景 |
国内市場では酸度とpHが品質のポイント。輸出用はさらに基準が厳しくなり、顧客によって異なる。飲料向けの基準は厳しく、現工場では対応できていない。
エタノール原料(さとうきび)の圧搾能力は、1日当たり4,500トンで、損益分岐点は3,000トン。この工場はブラジルでは中規模で年間90万トン処理している。
また、エタノール生産に伴う残渣は有機肥料として畑地に還元している。
(3) エタノール原料(さとうきび)の栽培と収穫
組合員であって実際にさとうきびを栽培している者(土地所有者)は80名で、平均面積は120〜140ヘクタール。これに加えて外部の160名と土地の借用契約により栽培している。
植え付けは手植えが主であり、試験的に機械植付けを実施。畝間は145cmである。緑肥としてクロタラリア(こぶとり草、マメ科)を植えている。株出は5〜6回行い年3回収穫可能で、単収はヘクタール当たり85〜90トンで毎年向上している。
収穫は臨時雇用労働者を使った手刈りが主であり(全体の3分の2)、雇用者は朝、ノルマを与えられる。労働時間は6〜7時間で、1日当たりの収穫能力は、焼き畑で1人当たり8トン、通常畑で4.5トン。焼き畑の場合、通常朝の5〜6時ごろに火を入れる。工場搬入は刈り取り後60時間以内に実施。労賃はトン当たり2.5レアル(138円)で750レアル(41,250円)/月(ブラジルの最低賃金の約2倍)。
ハーベスタは国産を3台所有しており、重量は17トン、240馬力、1日当たりの収穫能力は700トンである。重量が17トンもあるため、雨の日は、ほ場に入れない。搬出用トラックは5〜6トンのさとうきびを積載可能。
ほ場でトラッシュ等を検査しており、トラッシュ率の平均は2〜3%と低い。枯れ葉は熱効率を悪くする。土の混入率は1%が上限。
収穫期間については25〜30年前までは4〜6ヶ月であったが、品種改良により現在9〜11ヶ月間収穫可能となっている。昨年は11月末までに収穫が終了し、今年は2月27日から開始している(注:UNICAは3月1日からと説明していた)。
さとうきびの買入価格はトン当たり37レアルであり、糖度が基準となっている。
バガスは年間14万トン排出され、収穫されたさとうきびの約29%相当がバガスとなる。排出されたバガスの85%を電力(水蒸気)として利用し、残りは貯蔵しておき、うち2%は食品会社に売却するか家畜の飼料として使用している。バガスは1時間当たり2,700キロワットもの膨大な電力を生み出す。これは都市1万人分の年間の電力に相当する。しかし、現状ではバガスは不足しており、市販のバガスを購入利用している。5年後には自社生産ですべての需要を満たす予定だが、そのためにはさとうきびがさらに140万トン必要。
一方、バガスから燃料ペレットを生産しており、イタリアに輸出している。取引価格はトン当たり15〜16ドル。将来バガスからエタノールを生産することを考えている。バガスから現在のエタノール生産と同量のエタノールが生産できるとのことであったので、実現すれば現在の倍のエタノールが生産可能となる。
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写真13 COCAMARのさとうきび搬入車 |
写真14 さとうきび搬入施設(1日当たりの圧搾能力は4,500トン、トラッシュ率は2〜3%) |
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写真15 パラナ州 COCAMARの新植のさとうきび畑(ヘクタール当たりの単収は85〜90トン) |
写真16 COCAMARにおけるさとうきびの手刈り収穫(1) |
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写真17 COCAMARにおけるさとうきびの手刈り収穫
(2)
(通常畑で1人当たり1日4.5トンの収穫) |
写真18 さとうきび収穫をする労働者(労賃は2.5レアル(138円)/トン) |
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写真19 さとうきび収穫に使われる鎌 |
写真20 焼かれたさとうきび |
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写真21 COCAMARの大型ハーベスタ(1日当たりの収穫能力は700トン、重量は17トン) |
写真22 COCAMARのエタノール工場で排出されたバガス(年間14万トン排出) |
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ブラジルにおける砂糖・エタノールの関連地域(パラナ州は今回の現地調査地域) |
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パラナ州北西部にあるマリンガ市(COCAMAR 本部)とサン・トメ市(COCAMAR エタノール工場) |
4.リヒト主催の「Sugar and Ethanol Brazil」セミナーの概要
世界中で燃料エネルギーの関心が高まる中、さとうきびがエタノール生産向けに利用される割合が高くなってきていることもあり、砂糖とエタノールを取り巻く情勢は複雑になっている。
ブラジルは砂糖と燃料エタノールの世界一の生産国となっておりリーダー的役割を果たしていることから、今後もブラジルの生産動向が注目される。
なお、本文中の需給関連の数値は発表者により若干異なっている。
(1) エタノール
(1) エタノールの国際市場(2005年10月からの展開)
2005年10月頃からエタノール価格が上昇したが、これは前兆にすぎなかった。これまでは原油価格の上昇により砂糖の価格は上昇しつつあったが、その上昇度合に差があったという状態だった。しかし現在では、原油価格のさらなる高騰に引きずられるように、エタノールと砂糖の価格も同じようなペースでの高騰を続けている。
バイオマス・エネルギー源である、とうもろこしやさとうきびは政治的な要素だけでなく、経済的な要素からみても新しい展開となってきておりバイオマス・エネルギーは世界的に重要なものになってきている。
ブラジルは、プロアルコール計画やフレックス車生産の成功によりエタノールの生産と輸出を伸ばしており、世界各国の賞賛をあびている、一方、国内の供給不足からエタノールの国内価格の高騰に陥り、今までにない経験をしている。今後エタノールが燃料エネルギーとして確固たる地位を確立するためには、ブラジルにおいてエタノールの安定供給が確保されなければならない。
最近の傾向として、輸入税率の特別措置によりカリブ諸国から米国へのエタノール輸出が増加している(2005年の生産量:コスタリカ1.3億リットル、ジャマイカ1.4億リットル、エル・サルバドル9千万リットル)。
(2) 各国におけるバイオマス・エネルギーの関心度
バイオマス・エネルギーは今後、特にアジアで重要視される。アジアでは経済成長を続けているいくつかの国があり、生活水準の向上にともないクリーンなエネルギーの必要性が高まっている。アジアの中で特にバイオマス・エネルギーについて関心があるのは中国、インド、タイである。
バイオマス・エネルギーの先進国であるブラジルでは、バイオマス・エネルギーの研究が進んでおり、エタノールやバイオディーゼルのほかに、多様なエネルギー源(食料品の廃棄物など)を基に、バイオマス・エネルギーをつくる研究が進められている。
石油燃料を製造しているカナダ、ベネズエラ、ナイジェリアでも、ガソリンが及ぼす環境問題などを回避するためバイオマスエタノールの生産を開始した。
(3) 2010年の予想
2010年には各国でエタノールへの関心が高まると推測される。アメリカ大陸ではバイオマス・エネルギーの生産を開始しているし、東ヨーロッパ、北アフリカ、ロシアでも関心が出てくると予想される。また中央アジアの各国も石油燃料からエタノールの関心が高まると予想される。その他、食料品の廃棄物などからバイオマスエタノールを作る研究が進められるだろう。
(4) 中長期の情勢
政治的な要素からみると、ブラジルと同様に世界のリーダー的役割を果たしている米国において、昨年8月に「包括エネルギー法」が承認されたことは注目される。またインド、フィリピン、インドネシアでは燃料用バイオマスの重要度が高まり、EUでは再生可能エネルギー推進指令を受けて各加盟国でバイオマス・エネルギー導入の具体的な取り組みが展開されるだろう。
ア 米国
「包括エネルギー法」を受け、バイオマス燃料を現行の40億ガロンから75億ガロン(2012年)に増産することになっているが、他の先進国でもこれに追随して再生可能エネルギーの支援が増えるだろう。
米国では、MTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)が水質汚染の原因になる恐れがあることから使用制限の動きがあるため、その代替としてエタノールの生産が増えることが予想される。
イ カリブ諸国
カリブ諸国では10億リットルの生産が可能となる。それは2005年度の世界のエタノール流通の25%に匹敵する。しかも2012年までには20億リットルの生産が可能となる見込みである。
ウ アジア
アジアではバイオマス燃料を生産している国はほとんどないし、現時点で真剣に検討している国はない。しかし国によっては政府によるバイオマス燃料の導入等の検討が進められており、東南アジアでは資源が多い国においてバイオマス燃料に関心がある。バイオマス燃料の需要は、中国が15億リットル、インドが5億リットル、タイが2.5億リットルと見込んでいる。
エ EU
EUでは、バイオマス燃料の取り組みに遅れをとると予想される。EUではディーゼルが不足してガソリンが余っていることから、エタノールよりもバイオディーゼルに関心があり、エタノールの市場はそれほど大きくはならない。EUではバイマス燃料を製造する十分な畑作地はないが、需要の1割程度のバイオマス燃料を製造するために必要な面積はある。
(5) まとめ
今年度のエタノール供給は厳しく、エタノール価格は引き続き高騰する。しかし、エタノール産業は政策とインフラに大きく左右され、産業としての不安定性があるため、エタノール価格も不安定さを有している。
原油価格1バレル当たり約60ドル、ポンド当たりの砂糖価格を約15セントと仮定した場合、2006年のエタノール供給は引き続き堅調となり、2〜3年後はさらに堅調となると予想される。西アジアは引き続き魅力的なエタノール市場となり、アジアは今後魅力的な市場となる。
今後、エタノールの世界市場に影響を及ぼす重要な要因は、燃料価格とブラジルのエタノールの在庫量であり、世界一のガソリン消費市場を持つ米国の動向も重要。また、日本、カナダ、メキシコもガソリン市場が大きく、ガソリンへのエタノール混合が検討されており注視する必要がある。
さとうきびを生産しているほとんどの国は、面積が小さい開発途上国であり、エタノールやバイオ燃料政策を導入できる国は少ない。このため、世界一のエタノール生産国で優れた生産技術を有しているブラジルを見習い、ブラジルで開発されている品種や技術を研究することが必要となる。
世界各国においてエタノール市場を開発するためには、官民合同の協力が不可欠であり、ブラジルを手本としてインフラ投資や政策面の支援が必要となる。さらに、エタノール市場の信頼性と安定性を確保するために、適切な在庫管理を含む燃料の安定供給が必要となる。
(参考)アジアの市場展望
(1)日 本 ガソリンへのエタノール混合が義務づけされれば、巨大な市場になる。
(2)中 国 まだ市場は小さいが、輸送産業の発展に伴い市場の成長が期待。
(3)インド エタノール燃料の生産実績があり、今後、市場が拡大。
(4)タ イ 数年後にエタノール市場が急速に成長。
(2) 世界の砂糖市場
(1)2005/06年(2005年10月〜06年9月)の見通し
2005/06年の砂糖の生産は1億4千9百万トンの見込みで、アジアで13%伸びると見込まれるものの、世界全体では対前年比3.3%の増となる見込みである。2000年からエタノール需要が高まり、原料であるさとうきびがエタノール生産に利用されたことから砂糖の価格が高騰し、世界の砂糖在庫も2003年から大きく減少。2005年は砂糖市場の「変革の年」になったといえる。つまり今後砂糖市場は、「石油産業」と「エタノール産業」の動向も視野にいれなければないないことになる。
(参考)各国のさとうきびの生産の状況
(1) ブラジル
干ばつの影響を受け、生産量が減少。2005/06年は、3億8千万トンの生産となった。フレックス車の販売が好調なことから、原料となるさとうきびはエタノールへのシフトが強まる。
(2) インド
生産増が見込まれる。気候条件がカギとなる。
(3) タイ
2003/04年の記録を下回る。
(4) 米国
ハリケーン・カトリーナの影響を受け、生産量は減少(フロリダ州、ルイジアナ州など)。
(5) キューバ
生産増の期待があったが昨年の生産より下回る。
(2)今後の見通し
世界の砂糖消費は、ここ数年間コンスタントに伸びており、今後も人口と所得の増加により伸び、2015/16年の消費量は現在より3,200万トン増加することが予想される。ブラジルとインドがこの砂糖の需要の大部分を担う。そのうち、栽培技術の向上や品種改良などにより1,200万トンは
増産可能であるが、需要を満たす生産量は望めない。
世界の砂糖在庫は2003年から大きく減少しており、2005/06年の在庫量は5,700万トンの見込みで、在庫率は、キューバや米国の減産により2003/04年の46%から39%へ減少となる見込みであり、2006/07年も引き続き減少見込みとなる。
世界で砂糖需要が増大する中、キューバとEUの砂糖産業の縮小(downsizing)、およびエタノール需要の増加は世界市場の砂糖不足をもたらす恐れがあるので、砂糖の構造的な供給不足を避けるためには、さとうきび生産や工場への新たな投資が必要となる。
ブラジルは将来的な砂糖生産量の増加を発表しているが、国際的な需給に対応できるかがカギである。2010年までの需要増に対し73の工場を新設し、今後5〜6年間でその投資額は100億ドルにものぼると言われている。
一方インドでは、2006/07年に230〜240万トンの白糖を中東や極東に輸出することが予想される。ウッタルプラデーシュ州だけで、今後2年間に1日当たりのさとうきび圧搾能力を12.5万トンに高める投資が行なわれている。
しかしながらインド国内の砂糖の需要増とエタノール計画などから、砂糖輸出が制限される可能性もあり、安定的な輸出国になるかどうかは疑問であるとの見方が強い。
2.砂糖の輸出国としてのブラジル(カーギルシュガー社、アレクサンドル部長)
(1) 砂糖の世界バランス
世界の砂糖消費量は過去3年間生産量を上回っており、この傾向は来年もしくは数年間は続くであろう。在庫は過去10年間で最低水準となり、現在の在庫率は30%程度であり来年はこれ以下になるであろう。
(2) 世界の砂糖主要生産国
砂糖の主要生産国(砂糖生産トップ10カ国、シェアは73%)の生産は過去3年間をみると、減少しているか成長していない。例外はインドで今年の収穫期で大幅な増加となっている。
(3) 世界の砂糖輸出トップ10カ国
砂糖の輸出量は2年連続で減少しており、2006/07年は2001年以来の最低水準となるがこれは、消費量が年間で170〜180万トン増加したことが原因。しかし、2008年9月からは回復する見込みである。
世界の砂糖の需給バランス上重要な短期的な要素は、どの国がEUの砂糖の輸出減少分を補うかである。2013/14年の収穫期における輸出量の予測では、ブラジルが3,710万トン、ついでオーストラリア670万トン、タイ510万トンの3カ国に集約される。インドは安定した輸出国になれないとみている。
ブラジルの輸出はインフラ整備がカギとなる。サントス港、パラナグア港などから輸出が行われているが、2,500万トンの輸出が行われるときには、インフラ整備の強化が必要となり、USINAの貯蔵能力の強化も必要となる。ブラジルは現在、世界の砂糖輸出の約4割を担っており、2010年までには50%以上のシェアになると見込んでいる。
EUは砂糖の主要な輸出国であるが、砂糖の制度改革により2013/14年には輸入国となり、アフリカ、アジア、中東は引き続き輸入地域となる。このような中、ブラジルがすべての需要を満たすであろう。EUからの精製糖の輸出が削減されるため、これからの2年間、ブラジルからの精製糖の輸出が伸びるであろう。ニューヨーク相場のホワイトプレミアムは短期で70ドル水準、長期で85ドルまで上昇するのではないか。ブラジル産のクリスタル(イクムサ45)でも競争力が持て、国際市場に出回ることになる。EUの撤退やコスト削減の観点から、仕向け国(消費国)での精製糖工場の建設が進むと予想される。このような精製糖工場は、ブラジルのVHP糖の取引を活発化させるであろう。
(4) エタノール
ブラジルは、2014年までに国内需要を満たすため、250億リットルを生産しなければならない。含水エタノールは増加し、無水エタノールは減少するだろう。ブラジルは、国内の需要増へ対応しつつ、さらに20〜30億リットルを新たに輸出できる。このためブラジルは10年間でさとうきびの生産を2倍にしなければならない。砂糖の価格は、2005/06年より高騰すると見込まれるが、これはブラジル中南部での生産量は限られているからである。
過去3年間の投資は、土壌、さとうきび、工場の圧搾能力、エタノール生産(新規のエタノール工場)、製糖能力に行われている。通常、砂糖とエタノールの生産の切り替えは無限だと思われがちであるが、そうではなく砂糖も重視している。過去4年間におけるブラジル中南部における砂糖とエタノールの割合はピーク時でも砂糖52%であり、砂糖の価格が高くても基本的に砂糖の生産割合が50%以上にならないと思っている。砂糖とエタノールの生産比率は単純に決められるのではなく、各USINAの判断となるがUSINAの決定要素は、価格、顧客と明確ではなくそれぞれのUSINA間で大きく異なっている。
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写真23 セミナー会場風景 |
(5) 世界の砂糖相場
ブラジルの砂糖輸出は、90年代半ばから約1,000万トンだったが、現在は約1,700万トンで、さとうきびの半分をエタノールに使うようになったときから市場は変化してきた。砂糖相場の高値は向こう数年間は変わらないと見込まれる。つまり今後ポンド当たり18セントを下らない。理由として生産されたさとうきびの半分がエタノールに使用され、インド、東南アジアの収穫の改善のめどはなく、今後も砂糖在庫の減少は続くとみているからである。
3.ブラジルは砂糖とエタノールの需要に対処できるか?(Luiz Usina Alto Alegre代表)
世界の原油価格
今後の油田開発や精製拠点の開発には莫大な投資が必要となる。これは原油価格の高騰を示唆しており、原油価格の高騰がなければ新規の投資資金が得られない。また、世界の人口増加があり、開発途上国の人口は、2025年には世界人口の81%を占めるまでに増加すると予測。これはエネルギー消費の増加を予想させ、結果として代替エネルギーの需要が今後20年間で伸びていく。2030年には世界のエネルギー消費は60%伸びると思われ、その3分の2は開発途上国の需要となる。
石油市場はエタノール市場と砂糖市場に直結しており、3つの市場が相互に影響を与えている。エタノール市場のほうが砂糖市場より価格の上昇が顕著となるであろう。
アジア各国で砂糖の消費が顕著に伸びてきている。エタノールに関しては新規の市場が開拓できるようになる。エタノール生産が農業に影響し、競争力のない農産物の代替となる可能性がある。
砂糖の年間成長率は2%、エタノールで6%が見込まれる。エタノールはブラジルだけでなく、アジア、アフリカなどで高い成長率が見込まれ、アジアの中ではインドの成長率が高い。
エタノール生産は技術開発により、さとうきび、ビートだけでなく、穀類、パルプ、食品廃棄物等の利用が可能となり、農業全体の評価が上がる。このことから「技術力」が重要となる。
ブラジルでは、さとうきびの生産性の向上が挙げられる。年間3%の増加率であるが、USINA間でばらつきがある。これは現在の技術でもまだまだ生産改善の余地があることを意味する。さとうきび生産面積拡大による生産の増加よりも、単位面積当たりの生産性を上げる方がより現実的であり、コストの大幅削減をもたらす。将来的には生産性が決定的な意味を持つことになる。
大きなインパクトがあったのはフレックス車である。2010〜2012年頃には販売台数200万台のうち180万台がフレックス車となるだろう。今後ガソリンやエタノールと電気エンジンによるハイブリッド車が誕生することが予想され、エタノールの消費を節約すると予想される。
さとうきびの品種改良によって収穫期の長期化を図り、工場の稼働率を上げてコスト削減を図ることが考えられる。また、現在さとうきび1トンから85リットルのエタノールが生産されるが、技術革新により120〜135リットルの生産が可能となる。これにより、さとうきび栽培面積の増加がなくてもエタノールの増産が可能となる。
現在、ブラジルではエネルギーの約13.5%が再生可能エネルギーであるが、今世紀半ばまでには3分の1以上になると予想される。2020年までにさとうきび由来のエタノールの生産量は400万バレル/日となり、ブラジルと米国だけで供給できることになる。
今後は化石燃料が減少しバイオマス燃料の需要が高まり、ブラジル国内のエタノール市場も大幅に拡大していく。
4.フレックス車について(ヘンリーフォルクスワーゲン社マネージャー)
フレックス車はまだ販売されて3年しかたっていない。「TOTAL FLEX」はワーゲン社のブランドである。発売当初は、2010年には小型自動車販売の3分の2がフレックス車になるとの予想であったが、1年目に22%、2年目には30〜40%の売り上げがあり、その後フレックス車の売り上げは、さらに伸びて予想を上回るものであった。昨年暮れから今年1月の小型自動車販売の72%以上がフレックス車となり、昨年の実績は50%近い実績を記録した。
ブラジルでフレックス車を提供している会社は7社で、60車種の車が販売されている。そのうちフォルクスワーゲンは15車種であり、35%のトップシェアを持っている。
自動車燃料としては、米国ではとうもろこしから生産されるエタノール、大豆から生産されるバイオディーゼルが存在する。またドイツ、イギリス、フランスには菜種から生産されるバイオディーゼルがある。ドイツにはシュガービートからのエタノールがある。
エタノールを一部でも採用している国は、ブラジル、オーストラリア、カナダ、中国、コロンビア、インド、パラグアイ、南アメリカ、スウエーデン、米国などがあり、研究中の国は、アルゼンチン、キューバ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、ニュージーランド、フィリピン、ロシア、スイス、ウルグアイなどがある。
フレックス車が世界的に広まっていくことは明確になってきた。国際的に関心が高いものであり、近い将来ブラジルで輸出可能となり、世界各国で利用できることになるであろう。
5.砂糖とエタノールの生産コストに与える要素(イバン、砂糖・エタノールのコンサルタント)
(1) ブラジルにおけるさとうきび産業のコスト(2004/05年のUSINAのアンケート調査結果)
(1) さとうきびの生産コスト(トン当たり)
さとうきびの生産コストは、36レアルで、収穫、輸送コストが全体の2/3を占める。その他、地域差があるものの土壌の処理、整地等のコストがかかる。1ヘクタール当たりの平均単収は84トンとなっている。
(2) 加工コスト(トン当たり)
圧搾済みさとうきびの加工コスト(収穫期212日)は、13レアルであり、そのうち2/3が収穫期、1/3が端境期のコストとなっている。
(3) 管理コスト(トン当たり)
管理コストは5レアルであり、人件費が最大となっている。
よって合計、約55レアル/トンのコストとなる。コストの中で原材料費が一番高く2/3を占める。
(4) 砂糖生産のコストは、1袋50キロ当たり20.38レアル(金融や輸出等の販売費用を除く)。
(5) エタノールの生産コストは、640レアル/m3。
(2) USINAの利益の向上策
一定の前提条件でモデル計算した結果、以下が判明。
・工場の稼働率が高いほど固定費が希釈されコストが減り、収益が上がる。
さとうきびの単収増は、工場の稼働率の増加をもたらす。
・経済的メリットを得る方法は、より糖度の高いさとうきびを作り、製造工程の効率を高めることである。
USINAの利益向上の方策としては、
・フル稼働で工場を稼動させる(実際に92〜93%の高い稼働率の工場もある)。
・糖度の高い安価な原料を使う。適地適作が基本。原材料のコストが2/3になることに留意する。
・ロスを極限までに下げること。
となる。
6.エタノール消費の複雑さ(シンジコム 配給会社理事)
(1) ブラジルの燃料市場
ブラジルの燃料市場は約800億リットルとなっている。うち半分がディーゼル、3割がガソリン(そのうち1/4は無水エタノール)、他2割が飛行機用の燃料や燃料オイルとなっている。
ブラジルのエタノール市場はUNICAの統計によると2005/06年で国内生産が157億リットル、輸出は25億リットルとなっている。
(2) 市場の複雑化
現在、エタノールについては、エタノールの混合率以外は政治的な規制を受けていない(ガソリンのエタノール混合率は今年の3月から25%から20%となっている)。よって、エタノール価格はさとうきび生産の端境期等により変動する。
バイオマス燃料のディーゼルへの混合率は2%であるが、2008年からはそれが強制となり、2013年からは5%となる。
政府は、農業の雇用促進や環境に優しいエタノール生産に力を入れており、税制面でもガソリンに比べ優遇され、エタノールは天然ガスに次いで低い税率となっている。
天然ガスを燃料とする天然ガス車は、高価で消費者にはあまりなじみがない。天然ガス車はブラジルの多くの州で燃料の入手が困難なこと、燃料タンクを取り付ける必要があること、燃料を入れるのに時間がかかることなどから、あまり消費者には受け入れられていない。
(3) エタノール問題
エタノールに関して深刻な問題は、混合率について偽装が多いことである。ガソリンの課税率が高いことから、ガソリンにより多くのエタノールを混合する偽装が多くなっているという。その点天然ガスは偽装のしようがないと言われている。
エタノールの生産地が中南部に集中しているため、ブラジルの18の州でエタノールを取り寄せている現状であり、ブラジル最南端の州ではサンパウロから約1,000kmも離れていることから、エタノール価格は高価となっている。エタノール価格は供給地域からの距離によって格差が生じている。
(参考)エタノールの税率(サンパウロ)
ガソリンの原価は1リットル当たり約1.00レアルである。
ガソリンには1.35レアルの税金が入っているので、価格は2.35レアルとなる。
1+1.35(税金)=2.35(レアル)
無水エタノールの原価は1リットル当たり約1.22レアルである。
無水エタノールには0.04レアルの税金が入っているので、価格は1.26レアルとなる。
1.22+0.04(税金)=1.26(レアル)
80%のガソリンと20%のエタノールを混ぜると、税金は1.08レアルとなり価格は2.13レアルとなる。
1.05+1.08(税金)=2.13(レアル)
ブラジルの燃料の税金には以下の4種類の税金がある。
(1) Cide
(2) Pis/cofins
(3) ICMS(州税で州により税金が異なる。サンパウロは12%)
(4) ICMS SR
税金の割合は以下のとおり
(1) ガソリン
Cide+Pis/cofins+ICMS=44%
(2) エタノール
Pis/cofins+ICMS=28%
(3)天然ガス
Pis/cofins+ICMS=23%
7.ブラジルのバイオマス政策(農業省砂糖アルコール局長)
ブラジルのバイオマスは、ブラジル全エネルギー源の29%を担っており、そのうち半分がさとうきびからつくられるエタノールやバガスで、残り半分がユーカリなどの森林植物からとれる木炭である。石油燃料は限りがあるため、再生可能で環境に優しいバイオマス・エネルギーを国家を挙げて推進している。
(1) アグロエネルギー計画(2005年9月発表)
アグロエネルギー計画は農産物を原料としたクリーンなエネルギーの生産促進を目的とした計画であり、4つの原料からバイオマス・エネルギーを生産するものである。
(1) エタノール
さとうきびからつくられ、1930年頃から研究が進められている安価なエネルギー。
ブラジルの消費者は古くから自動車燃料として使用されたエタノールに対して好意を持っている。
・エタノールは1ヘクタール当たり6,500〜7,000リットルの生産が可能である。
・専門家によると、エタノールのガソリンへの混合は10%までなら一切の問題はないと言われている。
(2) バイオディーゼル
植物性の油(主に大豆)からつくられ、ディーゼルに50%混ぜても使用可能。エタノールより使用範囲は広く石油燃料に酷似している(電力発電、ポンプ燃料、農業機械などに使用可能)。しかし、エタノールと比べ、面積当たりの原料の生産性が低くコストが高い。
現在はディーゼルに2%の混合(任意)となっているが、2008年からは強制になり、2013年からは5%となる。ブラジルではエタノールの次にバイオディーゼルの生産を奨励している。
(3) バガス
4億トンのさとうきびから1億トン以上のバガスの生産が可能。現在、USINAの貴重なエネルギー源で、工場の電力を賄っており、余剰分は電力会社に買電している。ブラジルの8割は水力発電であり、バガスからの電力のシェアはまだ少ないが、将来の重要なエネルギー源として位置づけられている。
(4) 森林農産物
森林農産物のユーカリ(500万ヘクタール)やピヌスから木炭を製造する。主に製鉄産業に使われている。
(2) バイオマス(エタノール)計画についての各国への助言
(1) 農産物は収穫期にしかできないことから、エタノールの在庫の調整が必要である。消費者への安定供給をどうするかを常に考えておかなければならない。
(2) どのような政策支援を行なうか(ブラジルはエタノールの混合を義務づけ)。
(3) 消費者へのアピールが大切。
(4) 品質管理(どのような機関で行うのか)。
8.エタノール輸出国としてのブラジル(Philippe Alcotra CEO)
(1) エタノール輸出の現状
ブラジルの2005年のエタノール輸出量は25億リットルで、輸出先は、アジア37%、北米+カリブ諸国34%、EU22%、アフリカ5%、ラテンアメリカ2%となっている。輸出港別では、サントス港62%、パラナグア港17%、マセイオ港14%、スアペ港4%、カベデロ港3%となっている。今後、リオデジャネイロからの輸出の増加が見込まれる。これは、ペトロブラス社の子会社であるトランスペトロ社のパイプラインが完成し、それを使用した輸出が行われるからである。
(2) 輸入市場展望
主な輸入国は、アジア、日本、韓国、ラテンアメリカ、米国、ヨーロッパである。
2012年には次のような輸入量が見込まれる。
2005年 2012年
米 国 5億リットル 15億リットル
E U 2億リットル 10億リットル
アジア 5億リットル 30億リットル
アフリカ 1億リットル 10億リットル
ラテンアメリカ 2億リットル 15億リットル
(3) 世界のエタノール市場の見通し
世界のエタノール生産は450億リットルで、原油高騰により今後数年間の生産量は予想以上に伸びると見込まれ、2012年には約800億リットル(うちブラジルと米国合わせて600億リットル)となる。その内720億リットルは国内消費であり、輸出可能な数量は80億リットルと予想される。
(1)米国市場
米国のエタノール産業は、2005年8月の包括エネルギー法により、2006年には40億ガロン、2012年には75億ガロンの新規市場が誕生する見込みである。
2005年の米国のエタノール生産量は、約162億リットルであった(ブラジルは約164億リットル)。
ブラジルと米国で世界のエタノール生産の7割を占め、両国は自由市場(スポット)で相互に不足分を補完できることになる。また、両国は協力し、主にアジアの純輸入国への供給を保証すると思われる。
(2)アジア、豪州の市場
日本は2005年に約5億リットル、韓国は1.5億リットルのエタノールを輸入した。2012年には20億リットルの輸入が見込まれる。そのうち1/3は燃料エタノールとなるであろう。ブラジルはこの市場に対する主要供給国となり得るが、そのためには十分なロジスティックスと供給量をどう保証するかを考える必要がある。
日本の主要サプライヤーは、2003年は中国、2004年はブラジルであったが、2006年は、ブラジルは供給力不足のためトップサプライヤーとならないと予想される。
2012年におけるその他の潜在的供給能力がある国としては、中国、タイ、インドネシア、パキスタン、米国が挙げられるが、いずれも国内市場の余剰分の輸出である。
中国はE10を自国の生産で進めている。これにより48億リットルの市場が見込まれる。インド、タイではE10を目指して推進している。フィリピンは2007年にE5の国家プロジェクトが始まる。豪州はE10を進めているが任意である。京都議定書、原油の高騰により各国でバイオマス燃料事業が推し進められている。これにより中国、インド、タイ、フィリピン、豪州の国内市場は100億リットルの市場となり、それは国内生産により賄われると思われる。
(4) ラテンアメリカ市場
2012年までに20億リットルの市場になる見込みである。そのためには石油会社がE10などの混合燃料に積極的に参加する必要がある。これらの国が政策的にエタノール混合燃料を進め、ブラジルが安定供給できるならこれらの市場に参入できると見込まれる。
(5) EU市場
現在EUは工業用アルコール25億リットル、燃料用アルコール14億リットルの需要があり、2010年には、工業用アルコール27億リットル、燃料用アルコール80億リットルに増加する見込みである。この増加は、2007年に予定される5.75%のエタノール混合プログラムにより達成されると予想される(特にドイツとフランスでは新たな生産がかなり増えている)。
ヨーロッパではガソリンは十分であるがディーゼル燃料が不足しているため、石油会社では、バイオエタノールよりもバイオディーゼルを奨励している。
各国には優遇税制プログラムがあり、バイオマス燃料の補助金はヨーロッパ各国で異なっている。
EUではブラジルからのエタノールの輸入が44%を占めているものの、ブラジルは2006年には、EU国内での生産増およびエタノール関税の高さからEUへの輸出が減少すると見込まれるが、長期的には、米国と共にEUへの供給を分けることになると思われる。
(6) まとめ
(1) ブラジルは世界最大のエタノール輸出国で、2012年には生産量の20%を輸出に向ける。
(2) ブラジルはバイオマス燃料の依存度が高くなると予想される日本と韓国へエタノールを優先的に供給するが、両国は品質および安定供給に対して厳しい条件を付けるものと思われる。
(3) フランス、スペイン、ドイツなどEU主要国においてエタノール混合プログラムが実行されれば、EUのエタノールに対する輸入障壁は改善される予定。
(4) ブラジルは米国との自由貿易により互いにエタノールの供給を補完し合うことになる。
(5) ラテンアメリカは、ブラジルとの距離が近いことから混合燃料の導入は有利になる。
9.輸出(ペトロブラスの子会社トランスペトロ社報告)
(1) 概要
トランスペトロ社はブラジル最大の国営石油企業(公社)であるペトロブラス社の子会社で、エタノールの流通に関してプロアルコール計画から流通を担っており、30年以上の経験がある。
エタノールの流通はパイプライン、ローリー(一部鉄道)、タンカー(輸出)により行われている。24の陸上運送拠点、30の海上ターミナル、1万キロのパイプラインを所有しており、貯蔵能力は約1,000万m3である。輸出用のターミナルは、パラナグア港、リオデジャネイロ港、マセイヨ港などであり、13万トン級のタンカーによりアジアにもローコストで輸出できる。
(2) パイプライン
エタノールの主な輸送手段は以下のとおりである、30年前からパイプラインが使用されているが、生産地が散らばっているため現在ではローリーでの輸送が多くなっている。
しかし、これからのエタノール輸出の増加を考えるとパイプラインの方が低コストを実現できるため、今後はパイプラインを効率的に使用する。
ガソリンとエタノールの混合は、配給センター(distributors)で行われている。これは、ガソリンとエタノールの生産拠点が違うため、経済性を考えてガソリンとエタノールが集積される配給センターで行われている。
(3) 将来のパイプライン流通ビジョン
ゴイアス州(セネドターミナル)からミナス・ジェライス州を通り、パウリニアまでのパイプラインを建設予定である。パウリニアから既存のパイプラインを使用し、リオデジャネイロまで輸送することにより、年間400万m3の輸送が可能となる。
中南部では将来、サンセバスチャン港のターミナルの建設により年間400万m3の輸出が可能となることから計800万m3の輸出が可能となる。一方、北東部のマセイオ港は現在40万m3の輸出が可能であるが、拡張計画により2008年には70万m3の輸出が可能となり、北東部の全輸出を賄うことができる。
現在ペトロブラス社ではすでに年間160万m3の輸出が可能である(うち、中南部120万m3、北東部40万m3)が、これらの計画により2010年には年間870万m3の輸出が可能となる。
(4) ベネズエラへの輸出
現在ブラジルでは南米のエネルギーの統合を目的に、ベネズエラへに対して向こう30年間の技術支援(エタノールの混合技術指導等)を行うとともに、エタノールを輸出している。
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