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沖縄県におけるさとうきび増産に対する取組について

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2006年10月]

【今月の視点】
沖縄県農林水産部 糖業農産課   課長 比嘉 俊昭

はじめに
1.沖縄県農業におけるさとうきび・糖業の位置づけ
2.近年の生産状況
3.主な課題
4.さとうきび増産に向けた目標
おわりに


1.はじめに

 沖縄県におけるさとうきびは、近年、農家の高齢化や台風、干ばつの影響等により年々減少し、増産対策が強く求められている。
 このような状況を踏まえて、沖縄県及び島別さとうきび増産計画は、国の「さとうきび増産プロジェクト基本方針」(さとうきび増産プロジェクト会議:平成17年12月)に沿って、さとうきび産業の活性化に向け、増産に当たっての課題や必要な取組等について、県及び島別にさとうきび増産プロジェクト会議(18の会議を設置)を立ち上げ、同会議の検討などを踏まえ策定した。
 同計画における増産目標を達成するための具体的な方策として、さとうきび生産体制、担い手対策、地力増進対策、病害虫対策、干ばつ・台風対策、高性能作業機導入、新品種導入、共済加入促進の指導、遊休地解消対策等を取り組むこととしている。
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1.沖縄県農業におけるさとうきび・糖業の位置づけ


 さとうきびは、本県の基幹作物として県全域で栽培され、栽培農家数が18,110戸で全農家数の約7割、栽培面積が約19,000haで全耕地面積の約5割、さとうきび産出額が137億円で農業産出額の約15%を占めている。
 さとうきびは、台風、干ばつ等の厳しい自然条件下にあって、代替作物が困難な地域で生産されているとともに、さとうきび原料による製糖を通して雇用機会の少ない離島の地域経済を支えている。
 製糖工場は、17工場で、分みつ糖10工場と含みつ糖7工場がある。また、地区別立地状況は沖縄本島の2工場以外の15工場は離島に立地している。

2.近年の生産状況

 さとうきびの収穫面積は、沖縄本島では都市化や他品目への転換などにより減少しているものの、離島地域においてはほぼ横ばいの状況にあり、近年13,000ヘクタール台で推移している。単収は、7年間の平均が6.2トンで、高齢化や気象災害等の影響により全般的に低迷し、平成16年産は相次ぐ台風や干ばつ等により約5トンとなっている。また、生産量は、面積の減少や単収の低迷により減少傾向にあり、80万トン台で推移していたものの、平成16年産は約68万トンまで減少している。
 製糖工場の操業率は、生産量の減少に伴い低下傾向にあり、60〜70%程度で推移しており全体的に厳しい状況にある。
 農家の経営規模は、約75アールと零細で、1ヘクタール未満の農家が約80%を占めている。特に沖縄本島地域では1ヘクタール未満の零細農家が多く、離島地域の約64%に対して約94%を占めている。農家数は、平成10年の約20,000戸から平成16年では約18,000戸になり、年々減少している。

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3.主な課題

 さとうきびの生産は、農家の高齢化や都市化の進展、遊休農地の増加や肥培管理の遅れに加え、病害虫の発生、台風、干ばつの影響等により、年々減少している。特に、沖縄本島地域においては、零細農家や高齢化に加え、ほ場も狭隘なため機械化の遅れなどにより収穫面積や単収が減少している。離島においては、防風・防潮林の整備やかんがい施設等の整備の遅れ、アオドウガネやハリガネムシ等の土壌害虫の被害等により夏植中心の作型体系となっており、春植、株出の拡大を促進し、収穫面積の拡大を図る必要がある。
 また、ほ場やかんがい施設、防風・防潮林等の生産基盤の整備をはじめ、機械化一貫作業体系の確立、遊休農地の解消、担い手への農地の利用集積、適期の肥培管理の徹底、病害虫対策等により、品質及び生産性の向上を図る必要がある。

図−1 沖縄県におけるさとうきび・糖業の地理的位置づけ

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4.さとうきび増産に向けた目標

(1) さとうきび生産目標については、収穫面積の大幅な拡大が厳しい状況下で、株出栽培面積の拡大による収穫面積の確保、土づくりや適期肥培管理の励行による単収向上を図ることで、目標年次平成27年産で収穫面積約1万4千ha、単収6.6t/10a、生産量約94万5千tに設定している。

図−2 さとうきび収穫面積推移

図−3 さとうきび生産量・単収推移


(2) 目標達成に向けた取組について
 さとうきび生産目標の達成に向けた取組として、さとうきび生産体制の強化、担い手育成対策、地力増進対策、病害虫対策、干ばつ・台風対策、高性能作業機導入、新品種導入、共済加入促進の指導、遊休地解消対策等について、生産者や関係機関が一体となって取り組む。

【具体的な取組】
(1) 地域に即した生産対策や担い手育成、生産組織の育成により収穫面積の拡大と単収向上を推進する。
○ 経営安定対策の特例である生産組織の担い手育成について、本年末までに全県56地区で立ち上げに向けて取り組んでいる。(8月末現在10生産組織が設立されている。)(写真1、2)

表 増産プロジェクト計画における主な目標数値

写真1 沖縄本島最大の糸満市さとうきび生
産組合の設立総会
写真2 うるま市さとうきび生産組合の設立総会


○さとうきび生産組織の育成について、集落営農の先進地である富山県の取組について、市町村、JA等職員を対象に講演会を開催した。(8月24日)
(写真3、4)

写真3、4 講演会の開催「集落営農の取組について」(講師:富山県飯田副主幹)


○株出栽培の地域モデル展示圃の設置
a 糸満市:地下ダムを活用した栽培実証
b 伊是名村:地下ダムの活用と土づくりによる栽培実証
c 宮古島市:地下ダムの活用と土壌害虫防除による栽培実証
(写真5)

写真5 点滴灌漑の状況(灌水の有効利用)


○栽培技術の高位標準化対策
a 各地域から優良農家の掘り起こしを行い、優良事例の実証展示や啓蒙普及の推進
b JA広報誌等を活用した栽培技術の普及・啓蒙活動の推進
c 栽培基本技術の普及啓蒙として改訂栽培指針(平成18年3月)の普及推進(写真6)

写真6 改訂版「さとうきび栽培指針」及びダイジェスト版(平成18年3月 沖縄県)

○「さとうきび夏植生産性向上推進大会」の開催
 新たな政策の円滑な導入に向けて、支援対象となる今期の夏植えの生産向上を推進するため、発芽率の向上、灌水対策等の基本技術等の励行を目的に糸満市米須地区で推進大会を開催した。(9月5日)(写真7、8)

写真7、8 さとうきび夏植え生産性向上推進大会の開催状況(糸満市米須地区於)

○可動式誘殺灯設置による土壌病害虫の重点的な防除による不萌芽対策
 平成18年度において、「さとうきび土壌害虫防除確立支援事業」を宮古全域に導入し、土壌害虫であるアオドウガネを可動式誘殺灯で効果的かつ重点的に防除を実施することで株出栽培の拡大及び単収向上を図る。
(2) 農業共済制度への加入促進については、農家の要望を把握しつつ条件の整った地域に個人別危険段階共済掛金率を導入するとともに、共済制度の普及啓発(春植改植用の補償制度等)を図る。

【地域別の取組対策】
(1) 沖縄本島地域においては、収穫面積の減少に歯止めをかけるため、生産法人等による遊休農地の解消や農地の流動化により規模拡大を図るとともに、小型ハーベスタ等の機械導入による機械化一貫作業体系の確立と受託組織の育成、認定農業者や生産組織の育成に努める。特に株出管理機の導入及び受委託体系による早期株出管理作業等を推進し株出の単収向上を図る。
(2) 離島地域においては、農業用水の確保や防風・防潮林等の生産基盤の整備と併せ、優良品種の導入普及、バガス等を活用した土づくり等を推進し、高位安定生産を図るとともに、認定農業者や生産法人の育成、受委託組織による機械化一貫作業体系を確立する。また、現在、株出不萌芽のため夏植体系となっている宮古地域や一部離島地域においては、土壌病害虫対策により株出面積を拡大し、生産量の増加を図る。


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おわりに

 沖縄県としては、さとうきびを沖縄農業の基幹作物として位置づけ、生産基盤の整備、土づくり、機械化の推進、生産法人等の担い手育成、適期株出管理の励行、優良品種の普及・導入等諸施策を総合的に推進し、生産振興を図っているところである。
 特に、平成19年産からの新たな政策の導入に向けてさとうきびの増産を図るためには、生産者、農協、製糖工場、市町村、県関係機関等が一体となった生産体制の整備を図ることが重要であり、島別のさとうきび増産プロジェクト会議と連携し、目標達成に向けた取組を推進する。

図−4 沖縄県さとうきび増産プロジェクト会議の体制図

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