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「OECD-FAO Agricultural Outlook 2006-2015」の概要(砂糖関連部分)〜今後の世界砂糖市場の動向〜

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2006年11月]

【調査・報告〔海外/需給〕】

農林水産省 農林水産政策研究所 国際政策部   ヨーロッパ研究室長 上林 篤幸

1.はじめに
2.主な市場動向
3.非確実性および市場を見通す上での重要な問題
4.読み終わっての所感

1.はじめに

 去る7月に、「OECD-FAO Agricultural Outlook 2006-2015」が公表された。OECD(経済協力開発機構)およびFAO(国連食糧農業機関)は、世界的に影響力のある国際機関であり、その分析は、世界の政府関係者、経済界などから常に注目を集めている。本稿では、そのうち、砂糖関係部分の概要を紹介し、考察を加えたい。
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2.主な市場動向

 世界のさとうきびおよびてん菜の栽培面積は、2004/2005砂糖年度と、2015/16砂糖年度の間において14.5%増えると見込まれる。これは、過去10年間の安定的な推移に比較して、かなり大きな増加である。このうち、さとうきびの栽培面積の増加がそのほとんどを占める。また、そのうち、ブラジルがその増加のかなりの部分をしめ、かなり遅れてインドが続く。一方、てん菜の栽培面積は、主にEUが、2005年11月に合意されたCMO(共通市場制度)の改革により、砂糖の支持価格を削減することから、同じ期間中に5%減少するとみられる。
 世界の砂糖の生産量は、2005/06年度は、前年度から3%増加すると見込まれる。国別には、インド、中国、EUおよび東欧で、前年の低い作柄から回復するが、ブラジルでは、悪天候により、エタノールに対する高い需要の伸びにもかかわらず、ほとんど前年並みにとどまるとみられる。世界の砂糖の生産量は、20015/16年度には、2003−05年度平均を23%、すなわち3,400万トン上回り、1億7,970万トン(精製糖ベース)に達すると見込まれる。このうち、非OECD諸国の増加がこの増加の全てである。
 世界の砂糖の消費量は年々着実な増加を続けている。今後10年間は、過去10年間のペースを下回り、平均年率1.8%の割合で増加すると見込まれる。非OECD諸国では、同じ期間に2.3%の速度で増加するとみられる。
 砂糖の国際価格に影響を与える要因として、世界の砂糖の在庫率(期末在庫量/消費量)が挙げられる。2002/03年度の在庫率は48%であったが、市場のひっ迫により、2005/06年度には、約40%に減少し、これが国際価格の上昇をもたらしている。砂糖の在庫量は、さらに2007/08年度まで減少し、その後増加に転じ、2015/16年度には6,710万トンに達すると見込まれる。
 ブラジルは世界第一の砂糖生産国および輸出国である。今後、面積の増加と品種改良による高収量品種の導入、新しい砂糖精製工場設備への積極的な投資により、同国の砂糖の生産量は、見通し期間中、年平均3.3%の速度で増加するとみられるが、これは過去10年間の速度に比較して遅い。ブラジルのさとうきびは、2015/16年度には、2003−05年度平均に比較して、砂糖ベースで47%、4,200万トンへと増加すると見込まれる。この増加は国内需要の増加を満たすのに十分であり、輸出量は2015/16年度までに年間2,800万トンに達すると見込まれる。ブラジルは、現在世界の砂糖輸出量の40%を占めており、このような輸出量の増加は、同国の国際砂糖市場における支配的な位置を強化するとみられる。また、同国による輸出の増加は、強含みになっている砂糖の国際価格の上昇をやわらげる要因となる。
 輸入国の方をみると、ロシアは伝統的に世界最大の砂糖輸入国であり、1990年代にその輸入の大部分を精製糖から粗糖に転換した。 同国の砂糖の生産は、高い関税に守られ国内価格が維持される結果、国内のビートの生産と加工が刺激され、2015/16年度には、2003−05年度平均より310万トン、31%増加すると見込まれる。国内生産量が増加する結果、輸入量は安定的に推移し、2015/16年の輸入量は430万トンと見込まれる。
 アジアでは、中国が最大の砂糖市場であり、その重要性は今後徐々にその重みを増していくと見込まれる。急速な経済成長に伴う食生活の変化、とりわけ加工食品、飲料の摂取の増加は砂糖の消費量を引き上げるとみられる。2015/16年度にはその消費量は1,600万トンに達すると見込まれるが、これは2003−05年平均水準より31%多い。国内生産量も増加するとは見込まれているものの、砂糖の輸入量は2005/06年には既に同国の関税割当枠量(195万トン)を超え、見通し最終年には400万トンに達するものとみられる。

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3.非確実性および市場を見通す上での重要な問題

 ブラジルの砂糖市場の特殊性は、エタノールに存在する。さとうきびの半分以上が、エタノール生産に向かっている。見通し期間中において、エタノールの生産は、年率7%の速度で増加し、2015/16年度に330億リットルに達すると見込まれる。ブラジルのさとうきびは、砂糖とエタノールという2つの需要が増大を続ける最終製品に加工されるため、問題は、この両者の割合がどうなるかということである。過去2年間における原油価格の高騰により、エタノールはガソリンに比較して競争力を強化した。さらに、エタノール100%、あるいはエタノールとガソリンの混合物のいずれの燃料でも走行可能なフレックス車の普及により、エタノールに対する国内需要は急速に増加した。ブラジル政府は2006年3月に、エタノールとガソリンの指定混合率を、25%から20%へ引き下げた。もしこの指定混合率が、見通し期間中ずっと継続すると仮定すれば、エタノールに対する需要が減少し、より多くのさとうきびが砂糖生産に向けられるようになる結果、同国の砂糖の輸出が増加するかもしれない。

注:粗糖の国際価格:ニューヨークNo.11、fob、Carribian port(including Brazil)、bulk spot price, 9−8月
精製糖の国際価格:ロンドン、No.5、fob、Europe, spot, 9−8月
図 砂糖の国際価格の推移および予測

 EUの砂糖のCMO(共通市場規則)の改革も、国際市場に大きな意味を持つ。2005年11月、EU農相理事会は、長らく続いてきた砂糖制度の改革に合意した。この改革により、支持価格が36%削減され、単一農家支払い制度が導入されることになった。見通し期間中、この改革により、EUの砂糖の輸出量は、2015/16年度には、2003−05年度平均(477万トン)に比較して大幅に減少し、16万トンに減少すると見込まれている。 ブラジルの砂糖市場の特殊性は、エタノールに存在する。さとうきびの半分以上が、エタノール生産に向かっている。見通し期間中において、エタノールの生産は、年率7%の速度で増加し、2015/16年度に330億リットルに達すると見込まれる。ブラジルのさとうきびは、砂糖とエタノールという2つの需要が増大を続ける最終製品に加工されるため、問題は、この両者の割合がどうなるかということである。過去2年間における原油価格の高騰により、エタノールはガソリンに比較して競争力を強化した。さらに、エタノール100%、あるいはエタノールとガソリンの混合物のいずれの燃料でも走行可能なフレックス車の普及により、エタノールに対する国内需要は急速に増加した。ブラジル政府は2006年3月に、エタノールとガソリンの指定混合率を、25%から20%へ引き下げた。もしこの指定混合率が、見通し期間中ずっと継続すると仮定すれば、エタノールに対する需要が減少し、より多くのさとうきびが砂糖生産に向けられるようになる結果、同国の砂糖の輸出が増加するかもしれない。
 EUの砂糖のCMO(共通市場規則)の改革も、国際市場に大きな意味を持つ。2005年11月、EU農相理事会は、長らく続いてきた砂糖制度の改革に合意した。この改革により、支持価格が36%削減され、単一農家支払い制度が導入されることになった。見通し期間中、この改革により、EUの砂糖の輸出量は、2015/16年度には、2003−05年度平均(477万トン)に比較して大幅に減少し、16万トンに減少すると見込まれている。

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4.読み終わっての所感

 本年のOutlookは、砂糖の国際価格が昨年に比較し、一段と上昇しているなかで発表された。この価格高騰には、もちろん、明確な背景がある。その最も重要なものは、石油の国際価格上昇を背景として、バイオ燃料としてのエタノールがブラジルで増産されている事である。ブラジルは、世界最大の砂糖輸出国であり、さとうきび生産の世界における主要国であるが、アメリカ農務省の資料によれば、2006/2007砂糖年度には、エタノールの増産が続く結果、初めて、同国のさとうきび生産量の半分以上がエタノール生産に向けられることになると見込まれている。食用としての砂糖と、燃料としてのエタノールは、さとうきびという同じ原料から製造され、一方の生産が増えれば一方の生産が減るという、競合関係にある。
 一定の生産量の元では、エタノールの生産の増加は、砂糖の生産を減らし、その結果価格が上昇するはずであるが、本年のアウトルックは、「いったい今後砂糖の国際価格はどう推移するか」という読者の疑問に、極めて明快に答えを提供している。それは、高い価格をシグナルとして受け取った生産者は、高収量品種の導入、近代的な精糖設備への投資の増加などにより、さとうきびの生産量は、今後増加するため、需要に見合った生産が確保されると見込んでいる。すなわち、見通し期間中の前半では、砂糖の国際価格は上昇するが、後半では、価格の上げは止まり、フラットな(平準な)価格推移になると見込んでいる。
 また、見通し期間中の前半における砂糖の国際価格が強含みになるというもう一つの根拠として、EUの砂糖政策の改革を挙げている。EUの砂糖政策が改革されれば、結果として生産量および補助金付の輸出量が減少するため、国際市場への供給が減り、その結果国際価格が上昇するという構図である。
 OECDの見通しは、目下の砂糖の市場を取り巻く環境を冷静に判断し、今後の見通しを行ったものであるとして評価できる。ただし、需要に見合った生産が確保できるかどうかは、ブラジルを含め、新たなさとうきび畑の開発など、土地資源に余力があるかどうかの検証も必要になる。さとうきびは比較的乾燥に強い作物であるとはいえ、作付地が周辺の限界地に拡大すれば、水資源の確保も大きなテーマになると考えられる。今後の国際市場の推移に注目する必要がある。

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4.読み終わっての所感

 本年のOutlookは、砂糖の国際価格が昨年に比較し、一段と上昇しているなかで発表された。この価格高騰には、もちろん、明確な背景がある。その最も重要なものは、石油の国際価格上昇を背景として、バイオ燃料としてのエタノールがブラジルで増産されている事である。ブラジルは、世界最大の砂糖輸出国であり、さとうきび生産の世界における主要国であるが、アメリカ農務省の資料によれば、2006/2007砂糖年度には、エタノールの増産が続く結果、初めて、同国のさとうきび生産量の半分以上がエタノール生産に向けられることになると見込まれている。食用としての砂糖と、燃料としてのエタノールは、さとうきびという同じ原料から製造され、一方の生産が増えれば一方の生産が減るという、競合関係にある。
 一定の生産量の元では、エタノールの生産の増加は、砂糖の生産を減らし、その結果価格が上昇するはずであるが、本年のアウトルックは、「いったい今後砂糖の国際価格はどう推移するか」という読者の疑問に、極めて明快に答えを提供している。それは、高い価格をシグナルとして受け取った生産者は、高収量品種の導入、近代的な精糖設備への投資の増加などにより、さとうきびの生産量は、今後増加するため、需要に見合った生産が確保されると見込んでいる。すなわち、見通し期間中の前半では、砂糖の国際価格は上昇するが、後半では、価格の上げは止まり、フラットな(平準な)価格推移になると見込んでいる。
 また、見通し期間中の前半における砂糖の国際価格が強含みになるというもう一つの根拠として、EUの砂糖政策の改革を挙げている。EUの砂糖政策が改革されれば、結果として生産量および補助金付の輸出量が減少するため、国際市場への供給が減り、その結果国際価格が上昇するという構図である。
 OECDの見通しは、目下の砂糖の市場を取り巻く環境を冷静に判断し、今後の見通しを行ったものであるとして評価できる。ただし、需要に見合った生産が確保できるかどうかは、ブラジルを含め、新たなさとうきび畑の開発など、土地資源に余力があるかどうかの検証も必要になる。さとうきびは比較的乾燥に強い作物であるとはいえ、作付地が周辺の限界地に拡大すれば、水資源の確保も大きなテーマになると考えられる。今後の国際市場の推移に注目する必要がある。

 最後に、主要国の需給・価格動向および予測など、より詳しい情報については、OECD東京センター(http://www.oecdtokyo.org)にて出版物(英文)が購入可能であるので、そちらを参照されたい。

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