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品目横断的経営安定対策の下でのてん菜栽培について

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2007年4月]

【今月の視点】
北海道農政部食の安全推進局 農産振興課長   花岡 正博

北海道で栽培されるてん菜は、寒冷地に適した作物として明治初期に初めて導入されて以来、わが国の重要な甘味資源作物として、また、北海道の畑作経営において麦類、豆類、馬鈴しょとともに輪作体系の基幹作物としてなくてはならないものとなっています。

 近年のてん菜の生産状況をみると、作付面積は6万8千ヘクタール程度で推移しており、単収は平成14年産以降1ヘクタール当たり60トンを超え、根中糖分も平成13年産以降17%以上で推移するなど豊作基調が続いていました。平成18年産は、春先の天候不順による移植作業の遅れ、7月以降の高温小雨、秋の集中豪雨、褐斑病の多発などの影響から、単収は1ヘクタール当たり58トンと前年産を6%下回り、根中糖分も16.4%と前年産を0.7ポイント下回る結果となりました。

 てん菜生産者に対する政策支援は、これまでは糖価調整法の下で、てん菜糖製造企業に対し、政府が定める最低生産者価格以上で買い入れたてん菜を原料とする砂糖について、国内産糖交付金を交付する制度により、てん菜生産者の手取りを保証する仕組みがとられてきました。
  また、この財源として、独立行政法人農畜産業振興機構が輸入糖及び異性化糖を輸入する者等からの申し込みに応じ政府の定める価格で買い入れ、直ちに売り戻す方式により売買差額(調整金)を徴収してきました。
  なお、てん菜糖については、計画生産を目的として農業者団体が設定する作付指標面積が順守されているにもかかわらず、近年の単収、根中糖分の向上などによる生産増加が要因となって国内生産量が増加した結果、調整金収支の赤字が続く状況であったことから、平成17年産からは70万トンの供給上限が設定されるとともに、交付金の対象数量についても平成16年産で70万4千トン、平成17年産で67万4千6百トン、平成18年産で64万7千トンと制限が設けられ、平成19年産以降は64万トンとされています。

 一方、平成19年度からは経営所得安定対策等大綱に基づく品目横断的経営安定対策が実施され、てん菜生産者に対する政策支援は、麦、大豆、でん粉原料用馬鈴しょとともに、これまでの全農家を対象とした品目別の価格対策から、支援を担い手に限定し経営全体に着目した対策に移行し、諸外国との生産条件の格差を是正するため、「過去の生産実績に基づく支払」と「毎年の生産量・品質に基づく支払」が導入されます。


  品目横断的経営安定対策の財源は、国際的に合意がなされている重要品目に関する関税(調整金も含まれる。)です。
  多国間貿易交渉を進めるWTOのドーハ開発ラウンドは、主要国間の立場の違いが埋まらず、平成18年7月末以降交渉は中断されていましたが、平成19年2月に再開されました。
  また、特定の国の間で交渉を進めるEPA/FTAについては、平成18年12月、砂糖をはじめ、小麦、牛肉、乳製品など本道の重要品目と競合が強いオーストラリアとの政府間交渉の開始が合意されました。
  道の試算では、仮に重要品目の関税が撤廃されると、砂糖ではてん菜の生産、製糖工場、地域雇用等を含め約2千5百億円、乳製品、小麦等を含めると合計で1兆4千億円程度の生産の減少等による影響が予想され、本道農業が甚大な打撃を受けるだけでなく、地域の経済や社会の崩壊につながることが危惧されています。
  道としては、交渉の状況や本道への影響を道民の皆様にも理解していただき、今後の食料の安全保障と安全で安心な食生活の確保に向け、経済団体も含めたオール北海道での運動を展開するとともに、重要な農産物が除外又は再協議の対象となるよう、国等への要請活動を行うこととしています。

 新たな制度の導入後においても、てん菜生産は需要に見合った適正生産とより一層の生産コスト低減が求められており、そのため生産方法についても、従来の移植栽培から、条件の許す地域などにあっては経費の低減が期待できる直播栽培を推進することが重要となります。出芽・初期生育の不安定さや風霜害の影響など課題も多い直播栽培ではありますが、麦類との混播栽培による風害の軽減、高砕土・狭幅鎮圧による出芽率向上等、技術改善に関する試験研究が進んできており、また、直播栽培の経済優位性も高まることから、生産コストの低減に向け積極的な導入検討が望まれるところです。
  また、育苗・移植・収穫に係る作業の共同化や受委託など生産の組織化等の取組を推進していく必要があります。

 このように国際交渉での懸念材料も存在する中、新たな制度の下でのてん菜生産ではありますが、糖価調整制度の下で、国民負担の低減も踏まえ、計画的な生産を前提に良品質・低コスト生産を図っていくことが重要です。


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