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最終更新日:2010年3月6日
はじめに
さとうきびは古来より砂糖の原料として栽培されており、わが国でも沖縄県と鹿児島県の離島を支える基幹作物として、農業経営及び地域経済において重要な位置を占めてきた。また、さとうきびから砂糖を得るのみではなく、製糖工場ではさとうきびから砂糖を搾った残渣であるバガスをボイラー燃料として利用するなど、副産物の利用も行われている一方で、さとうきび茎皮のワックス成分(オクタコサノール)、黒糖など含みつ糖中の抗酸化物質など、さとうきびには蔗糖以外に種々の有効成分が含有されていることが知られており、これまでもさまざまな効果が研究されている。
当社でも、さとうきび由来の有効成分の探索を行っており、これまでに新たな効果を有するさとうきび抽出物の開発を行った。本稿では、その概要について紹介する。
さとうきび抽出物の製法及び効果
当社の開発したさとうきび抽出物には製法の違いにより4種類あり、分類すると以下のようになる。
(1) さとうきび抽出物1
さとうきびを圧搾して得られた圧搾汁を原料として、合成吸着剤樹脂に通液、吸着した成分を回収する樹脂分離により得られる水溶性の不揮発性成分を主成分としたもの。
(2) さとうきび抽出物2
さとうきびの圧搾汁を濃縮する際に得られる揮発性成分を樹脂に吸着分離することにより得られる画分からなるもの。
(3) さとうきび抽出物3
さとうきびを圧搾した際に得られるバガスから熱水抽出することにより得られる水溶性成分からなるもの。
(4) さとうきび抽出物4
さとうきびの圧搾汁を原料として、クロマト分離を行うことにより得られる不揮発性成分からなり、さとうきび抽出物1とは組成の異なるもの。
それぞれのさとうきび抽出物の製法概要を図1に示した。
また、これらは効果別に分類することができ、大別すると以下のような3つの効果がある。
(1) 呈味改良効果:さとうきび抽出物1
食品の好ましくない異味(苦味、渋み、酸味など)、不快臭(生臭さ、青臭さ、刺激臭など)を低減する効果
(2) 消臭効果:さとうきび抽出物2
生活・環境の臭い、生体の臭いを低減する効果
(3) 生育促進効果:さとうきび抽出物3,4
家畜・家禽の増体重効果、飼料要求率の改善効果などの生育促進効果、抗ストレス効果
図1 さとうきび抽出物の製法概要 |
さとうきび抽出物の使用用途
呈味改良効果:さとうきび抽出物1
さとうきび抽出物1の使用用途としては、以下のような例がある。
・ ビフィズス菌ヨーグルト:有機酸臭、苦味、えぐみの低減と後味、べたつき感の改善
・ 豆乳:豆臭、青臭さの低減
・ ビタミンや鉄を含有する飲料:ビタミン臭や鉄錆味の低減
・ アミノ酸飲料:臭いや苦味の低減
・ オーストラリア産牛肉:牧草臭の低減
・ EPA・DHA含有食品:魚臭さのマスキング
・ 缶コーヒー:乳化剤のえぐみの低減とべたつき感の改善
・ 果汁飲料:加熱による劣化臭を低減、甘い香りを付与
消臭効果:さとうきび抽出物2
さとうきび抽出物2の使用用途としては、以下のような例がある。
・ ペット用消臭剤:獣臭の低減
・ お手拭:石油などの強い臭いの低減
・ 住まいや衣類用消臭剤:住まいや衣類に付いた臭いの低減
・ ヘアコロン:頭髪に付いたタバコの臭いや頭髪臭の低減
・ 化学消臭効果:トリメチルアミン、アンモニア、硫化水素などの濃度自体を低減
また、さとうきび抽出物は天然の抽出物であるため、ペットがなめても安全であり、住まいや衣類に使用しても、べとつきやカビの発生を伴わないというメリットもある。
家畜・家禽の生育促進効果:さとうきび抽出物3、4
使用用途としては、以下のような例がある。
・ 養豚:幼豚用代用乳などへの利用
・ 養鶏(肉用、採卵):地鶏用飼料、ブロイラー用飼料への利用
・ 乳牛、肉牛:乳牛用飼料への利用
写真さとうきび抽出物使用商品 |
今後の展開
前述したように当社で開発したさとうきび抽出物はそれぞれ呈味改良用のさとうきび抽出物1、消臭用のさとうきび抽出物2、飼料用のさとうきび抽出物3、4は既に商品化され、食品、消臭剤・化粧品、家畜飼料などの原料として使用されている。
一方で、さとうきび抽出物には、ウイルスや細菌などによる感染症に対する感染予防治療効果が、サルモネラやコクシジウムを用いたニワトリの動物実験でも確認されている。また、家畜や家禽の病気の発症を予防するためのワクチンの効果を向上させる効果であるワクチンアジュバント効果に関しても、抽出物を併用することでワクチンの効果が向上することが確認されている。その他にも、抗ストレス作用、肝障害抑制効果、抗酸化効果、抗胃潰瘍効果などの生理機能も確認されており、今後は、これらの生理機能を応用した分野での展開を図りたいと考えている。
このように、これらさとうきび抽出物は、さとうきびから得られる天然の有効成分であることから、今後もさまざまな分野での利用が進むものと期待している。
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