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砂糖についての大学生・母親アンケートから

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2003年2月]

 99年4月下旬に岡部講師が、女子学生を対象に行った調査(本誌99年12月号掲載)では、砂糖の原料である「さとうきび」や、「てん菜」といった甘味資源作物について十分に理解されていないといった実態が明らかになりました。さらに前回の調査では、砂糖を用いたお菓子について、世代間の相違がうかがえた結果が出ました。
今回は、砂糖そのものをテーマにし、砂糖に対してどれだけ正確な知識を持っているかを調査しましたので、紹介いたします。

滋賀大学名誉教授 金城学院大学非常勤講師
岡部 昭二


はじめに
I 調査結果と考察
まとめ


はじめに

 これまで4年間にわたり女子大学生の砂糖やお菓子についての意識や行動を様々な面から取りあげてきた。
 前回は2001年4月下旬に女子学生、男子学生、母親に対して好きなお菓子について調査(本誌2002年5月号掲載)を行ったところ、学生は女子、男子共に1位アイスクリーム、2位チョコレート、3位ショートケーキと同一の傾向を示した。母親の場合は洋菓子、チョコレート、せんべい類のいわゆる 「御三家」 といってよく売れるお菓子として認知されているものが独占した。嫌いなお菓子として学生男女共にようかんを挙げたのに対し、母親はスナック菓子を挙げたところに世代間の相違が若干うかがい知れた。なお、昔ながらの駄菓子については男女共、学生に興味がある者が多く、母親の2倍もあったことは興味深い結果と思われた。
 今回は砂糖に対してほとんど迷信と言えるような根強い誤解(以下、本稿において迷信という。)があることから、「砂糖の正確な知識」 を持っているかどうかについて調べることにした。また、男子大学生と母親に同じ設問を行い、女子大学生と男子学生及び母親について差があるかを併せて調べてみることにした。
調査時期 平成14年4月下旬
調査対象 女子大学生
男子大学生
学生の母親
合   計
100名
100名
100名
300名

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I 調査結果と考察

 砂糖についての調査の結果を示すに当たり、女子大学生、男子大学生及び学生の母親を、それぞれ「女子」、「男子」及び「母親」と略すことにする。結果については、各設問の30%以上の回答があったものを取り出すこと及び女子、男子、母親の間に統計的にはっきりした差があるもの(危険率0.1%以下)に注目することの2点を眼目とした。

1 「砂糖を摂ると太る」 と思っているのは、女子が最も多く79%であり、母親の62%、男子の61%と比べると明らかな差があった。なお、「そう思わない」は男子が37%で最も多く、女子の18%が最低だった。
砂糖を砂糖を摂ると太る
アンケートグラフ

2 「砂糖を摂ると糖尿病になる」と思っている人は、男子が65%と多く、母親の42%と明らかな差があり、逆に「そう思わない」の回答は母親が51%と多く、男子の33%と明らかな差があった。男子、女子とは対照的に半数以上の母親が正しい見解を持っていたのは、マスメディアを通じた正しい砂糖の知識に関する啓発の効果があったと思われる。
砂糖を摂ると糖尿病になる
アンケートグラフ

3 「砂糖を摂ると虫歯になる」と思っている人は学生、母親とも過半数に達したが、学生の方が母親よりその割合が高かった。
砂糖を摂ると虫歯になる
アンケートグラフ

4 「砂糖を摂ると骨を溶かす」と思っている人は母親が35%と最も多く、これは一頃盛んに言われていたため母親に肯定する人が多かったと考えられる。女子は12%と母親とは大差があるが、「わからない」との回答が30%もあるのが気になった。「そう思わない」と回答したのは男子70%、母親55%、女子58%と過半数であったことから、現在ではこの迷信を信じている人は少なくなりつつあるようである。
砂糖を摂ると骨を溶かす
アンケートグラフ

5 「砂糖を摂るとビタミンB1を消費する」については、「わからない」人が多かった。女子は75%が「わからない」で、母親の59%と差があった。ビタミンB1は砂糖だけでなく炭水化物の代謝に欠かせない重要なビタミンであるので消費することは確かである。しかし、通常の食事によって欠乏して脚気になることはない。
砂糖を摂るとビタミンB1を消費する
アンケートグラフ

6 「白砂糖はからだに良くないが、黒砂糖はからだに良い」と思っている人は、母親が53%、男子40%、女子39%だった。世間でよく言われている迷信であるが、特に母親に根強く残っているようである。たしかに黒砂糖は白砂糖に比べミネラルは多いが、ミネラルの摂取には野菜のほうが効果的である。例えばカルシウムについては、黒砂糖は240mg/100g、茹でたほうれん草の60mg/100gより多く、白砂糖は1mg/100gであるが、食べる食品の量から考えれば野菜から摂取するのが合理的である。
白砂糖はからだに良くないが黒砂糖はからだに良い
アンケートグラフ

7 「砂糖は脳の働きに必要なエネルギー源である」について「そう思う」は女子が90%で全選択肢中で最高の回答率を示した。母親は84%、男子は75%といずれもかなり高率であった。これは最近マスメディアが盛んにPRした効果によるものと思われる。比較的短期間に正しい事実がこれだけ浸透していることは驚きであった。なお、女子と男子には大差があった。なお、脳は体重の約2%に過ぎないが、脳は全エネルギーの約20%を必要とすることを付言しておこう。
砂糖は脳の働きに必要なエネルギー源である
アンケートグラフ

8  『少年犯罪の原因は、砂糖を含む食品である』という学者の見解が新聞紙上を賑わせたので、かなりの人がそう信じているのではないかと思っていたが、「砂糖を摂ると『キレル』原因となる」と思っている人は、母親の12%が最高で、学生は5〜6%に過ぎなかった。「そう思わない」が66〜72%もあり、迷信は払拭されつつあると思うが、学生の約3割が「わからない」と回答しているのは気がかりである。
砂糖を摂ると『キレル』原因となる
アンケートグラフ

9 「砂糖を摂るとストレスが和らぐ」と思っている人は、女子が79%もの回答があった。最低の男子でも55%であったが、女子とは大差があった。母親は68%で、砂糖のこの効果に対して女性の方が肯定的であるようだ。
砂糖を摂るとストレスが和らぐ
アンケートグラフ

10 「白砂糖は漂白している」は古くからある迷信であるが、そう思っている人は、母親が36%で最も高かったが、ある時期に「漂白している」と教えられた人は今でもそう思い続けているようである。学生は20%程度で、「そう思わない」ほうが多かった。
白砂糖は漂白している
アンケートグラフ

11 「砂糖は食べ物の保存に役立つ」と思っているのは、母親の62%に対し、男子は24%と低くしかも大差があった。男子は42%が「そう思わない」で、男子の調理知識の無さが表れている。なお、女子は過半数の55%がそう思っている。
砂糖は食べ物の保存に役立つ
アンケートグラフ

12 「砂糖を加えて調理すると食べ物の色艶が良くなる」と思っているのは、母親の72%が最高で、最低は男子の31%で前問と同じく大差があった。なお、「わからない」が男子38%、女子36%であった。
砂糖を加えて調理すると食べ物の色艶が良くなる
アンケートグラフ

13 「砂糖は賞味期限がない」について「そう思わない」が女子は74%、母親は67%、男子は62%と各グループ共6割を超えたことに驚く。母親は食品の表示を良く見ていると考えられるが、砂糖に賞味期限があると思っている人が多かったことは意外な盲点だったと思われる。最近、食べ物の安全性に対する意識が高まっている中、食べ物ならなんでも賞味期限を確認するという傾向があるためか、大きな誤解である。
砂糖を加えて調理すると食べ物の色艶が良くなる
アンケートグラフ
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まとめ

 今回は、砂糖の特性や砂糖に関わる知識と誤解について多角的な視点に立ってアンケートを行った。また、女子大学生と男子大学生及びその母親との比較を行ったことも特徴と言えよう。その結果、いくつかの興味ある結果が得られた。中でも、「砂糖は脳の働きに必要なエネルギー源になる」ことを知っている人は、各グループ共とても多く、総計では、13問中最高の83%にも達した。最近、マスメディアが盛んに取り上げているとはいえ、このような高い率を示したことは驚きであった。大学における入学当初のアンケートであり、学生がまだ高校までの知識に等しい状態であることから考えて一層その感が深い。
 次に、少年犯罪の原因が砂糖を含む食品であるという見解が新聞記事に掲載され、社会問題にまでなったが、現在ではそう思っている人はわずか8%で、かなり少数であった。
 他方、「砂糖は摂ると太る」とか「砂糖を摂ると糖尿病になる」との俗説を信じる人は減ってきているものの、まだかなり多くいることは無視できない。
 なお、砂糖の性質による調理上のメリットについては、母親は良く知っているが、学生の知識は不十分で、特に男子はわかっていないといえる。
 「砂糖に賞味期限がある」と思っている人は各グループとも60%を超えているので、今後、砂糖における消費期限の表示は必要でないことをPRすべきではないかと思った。
 以上の結果から、砂糖についての正しい意識が極めて高率だった回答がみられたことから、正しい情報がかなり浸透してきたと実感できる面もあるが、反面、誤った旧来の迷信を信じている人もあり、なお様々な機会を捉えて継続的に砂糖の正しい知識の普及に努力する必要があると考える。
 質問の中で「砂糖はどの程度摂取したら良いか」との質問が多かった。非常に身近な問題であるが、意外とそれに答えている成書は少ない。砂糖は他の炭水化物と同じで1g当たり4kcalであり、脂質は1g当たり9kcalであるから自己の摂取エネルギーから併せ考えるべき問題である。
 学生の中で 「カロリーが低い砂糖」 と表現するなど、甘いものをすべて砂糖と見る向きもあったが、正しくは甘味物質で、この場合はアスパルテームやステビオサイドなどを考えているようである。  次に男子の特に多かったのは 「砂糖は何故甘いか」 である。確かに大学の教科書にも載っていない。水酸基の多さに関係があるかもしれない。「砂糖は何故白いか」。これは波の飛沫と同じで光の乱反射による。大きな氷砂糖は白くないが、粉々にすれば白くなることでも納得できよう。
 学生は 「砂糖はどのようにして作るのか」 と疑問を持っている者が多い。また母親からは 「砂糖の種類に応じた使い方をしたいが、砂糖の袋には何も書いていないのでわからない」 といった意見があった。このあたりは関係者の広報活動に期待するところ大である。
 今回、アンケートを回収した後で、砂糖についてのパンフレットを全学生に配り、要点を説明したところ、「毎日食べている身近な砂糖であるにもかかわらず、これまで知らなかったことが多かった」 と喜んでいたことを付言しておきたい。
アンケート
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「今月の視点」 
2003年2月 
砂糖についての大学生・母親アンケートから
 滋賀大学名誉教授 金城学院大学非常勤講師 岡部 昭二

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