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農業大学校における農業機械教育とサトウキビ作の機械化

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2004年6月]

沖縄県農業試験場農業機械研究室長(前沖縄県立農業大学校農業機械研修部門教授)
赤地 徹


はじめに
1.沖縄農大農業機械研修部門の概要
2.農業機械士の役割
3.今後の方向
4.おわりに


はじめに

 農業の担い手を計画的に育成する観点から、各道府県に農業大学校(注1)が設立され四半世紀以上が経過した。この間、多くの卒業生を輩出し農業後継者の確保に大きな役割を担ってきたことは周知のとおりである。農業に対する社会のニーズが多様化し大きく変遷していく流れの中で、農業大学校も変わらなくてはいけない時期にさしかかっている。
 教育内容や対象者の変化などいろいろな課題を抱えているが、本稿では、沖縄県立農業大学校(以下「沖縄農大」と略す)における農業機械教育研修が、沖縄の基幹作物であるサトウキビ作の機械化に果たしてきた役割について整理しながら、今後の進むべき方向について私見を述べさせていただきたい。

(注1) 農業大学校は農業改良助長法により「農業教育研修施設」と規定されており、現在40の道府県に設置されている。2年制の養成部門と短期の研修部門を併せ持っている場合が多い。名称は、ほとんどの場合「農業大学校」であるが「農業実践大学校」、「営農大学校」、「農林大学校」、「農業アカデミー」などと呼ぶところもある。このほか類似の教育機関として「独立行政法人農業者大学校」、民間の「八ヶ岳中央農業実践大学校」、「日本農業実践学園」、「鯉渕学園」などがある。
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1.沖縄農大農業機械研修部門の概要

 沖縄農大はその前身である「沖縄県農業研修センター」をもとに、昭和54年4月に設立された。2年間の全寮制就学を前提にした養成部門と一般農家等を対象にした短期の研修を行う研修部門がある。

(1) 養成部門と研修部門
 養成部門は2課程(園芸、畜産)に4コース(野菜、花き、果樹、肉用牛)が設置されており定員は4コース合計で45名である。各コースごとの定員は決められていない。
 研修部門では農業機械研修を中心に就農予定の高校生を対象にした「緑の学園」、農業への新規参入者やUターン就農者等を対象に基礎的な研修を行う「就農サポート講座」などを実施している。(詳しくは沖縄農大公式ホームページhttp://www3.pref.okinawa.jp/site/view/cateview.jsp?cateid=128を参照されたい。)

(2) 学生への機械化教育
 沖縄農大の養成部門は上述のように、農業の実践者の養成を目的にしたコース設定になっており、いろいろなところでよく質問されることだが、特に農業機械技術の習得を目的にしたコースはいまのところ設置されていない。また、基幹作物であるサトウキビについても同じである。
 農業機械に関する教育カリキュラムは、基礎科目としての位置づけで各コースの共通科目となっている。具体的な内容は表1に示したとおりであるが、特に農業機械実習においては、就農後に役立つという観点から免許(大型特殊自動車運転免許、けん引免許)や資格(農業機械士)の取得に主眼が置かれている。実習時間の制約の中で、重要でありながら資格取得に無関係な技術や項目については犠牲にされてきた部分もあり、平成16年度(第26期生)からは「けん引免許取得」をカリキュラム(単位)からはずし、学生が自分の意志で選択して受講できる「研修」へ変更して、本当に必要な技術の習得ができるように改められた。まだ不十分ではあるが、動力噴霧器や刈払機などの小型農業機械類の整備法、簡単な機械工作技術や農業施設の補強技術等に関する実習が新たに組み込まれかなり改善されたものと考えている。また講義のうち「農業施設概論」についても同じような理由により、今年度から強化された科目である。
表1 学生に対する教育科目(農業機械関連)
科目名 区分 学年 単位 時間 主な内容
農業機械概論 I 講義 1 2 30 農業機械の基礎/トラクタ工学
農業機械概論 II 講義 1 1 15 農業機械の応用/農業機械士学科検定
農業施設概論 講義 1 1 15 農業施設の基礎、応用
農業機械利用基礎 実習 1 2 60 大特免許取得/農業機械士実技検定
農業機械農業施設応用 実習 1 1 30 簡易な工作、修理、耕耘作業等実習
農業機械士応用研修 研修 2 28 けん引免許取得(8時間×3.5日)
*けん引免許取得研修は卒論発表後卒業式までの間に希望者に対して実施する

(3) 農家への機械化研修
 沖縄農大は発足後養成部門を中心に学校の運営がなされてきたが、昭和58年に新農業大学校として再編され、研修部門の充実強化が進められた。いわゆる生涯教育等を念頭におきながら広く県民一般へ学習の機会を提供していくということである。従来の養成部門を維持しながら公開研修を実施するとなると、施設やスタッフなどの問題がありなかなか強化が進まないというのが現実であるが、その中で農業機械研修部門が大きな役割を担ってきたと言えるだろう。
 県が実施する農業機械に関する研修は「農業機械化促進法」を基本法としている。同法第1章第3条に「国又は都道府県は、この法律で定めるものの外、農業機械化のための研修、指導、試験研究及び農機具の導入事業その他農業機械化の促進に有効な事項については、これを積極的に行わなければならない。」と規定されており、これを根拠として国および都道府県により種々の機械化研修に係る施策が実施されている。沖縄県は「沖縄県農業機械研修実施要領」を定め、沖縄農大を中心に機械化研修を実施するとしている。なお、県によっては試験研究機関や機械化研修センター等を別途設置して実施しているところもある。
表2 農業機械公開研修の概要
表2 農業機械公開研修の概要
写真1
写真1 農業機械士養成研修の様子1
写真2
写真2 農業機械士養成研修の様子2
 現在沖縄農大で実施している公開研修を表2に示した。この中で特に重点的に行っているのは農業機械士養成研修である(写真1、2)。近年補助事業や公的融資等で農業機械を導入するような場合は、農業機械士の資格を有することがほぼ必須条件となっており、農業生産法人の育成が進められていることなどとも相まって、この研修に対する需要は非常に高い。ここ数年は毎年応募者の調整に頭を痛めている状況である。応募状況によっては追加研修を実施したり、また離島地域の研修需要に対応するため毎年1カ所の離島で研修を開催している。
 そのほか、これから重要と考えられる農業機械化のマネージメントに関する研修を昨年度から重点的に行っている。これには、農業機械を販売するディーラーの担当者も受講対象者に含め、売る側から実際に使う側までの幅広い関係者が共通の認識に立って、農業機械の導入や効率的な活用ができることをねらいとしている。
 このように種々の研修を行っているものの、未だ現場からの要望に十分答えられているとは言いがたい。基礎研修や応用研修の定員増をはじめバックホウなどの車両系建設機械の操作に関する研修やアーク溶接、ガス溶接等機械工作に関する研修などが毎年のように要望されているが、施設やスタッフの制約から実施に至っていないのが現状である。
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2.農業機械士の役割

 沖縄農大では、前述のように学生も含めて農業機械士の養成に力を入れている。これまでに累計で1400余名の農業機械士が認定されている(平成15年3月末現在:図1参照)。認定を受けた方々の多くは、いろいろな場面で農業の機械化に関わっている。
図1 市町村別農業機械士等認定数
H15/3月末までの累計認定数
農業機械士 : 1484名 指導農業機械士 : 37名
図1
(1) サトウキビ作機械化の担い手
 サトウキビ作の現場では、収穫作業を中心に機械化が進められ、平成14〜15製糖年期には全体の38パーセント(面積ベース:沖縄県糖業農産課資料)が機械収穫であった。機械収穫率の向上には、小型から大型にいたる種々の収穫機がラインナップされ、それぞれの地域や条件に適合した収穫機が導入できる環境が整ってきたことが大きく貢献している。機械収穫率が50パーセント以上に達するのは時間の問題であり、いまやサトウキビ作機械化の関心は、植付作業やそのほかの管理作業にシフトしてきている。
 このようなサトウキビ生産現場での機械化の大きな担い手となっているのが、いうまでもなく農業機械士として県知事の認定を受けた方々である。沖縄農大の卒業生に関しては、在学中の専攻コースとサトウキビ作が直接結びつくわけではないが、数は少ないものの現場のオペレータやディーラー、JAの技術者として大きな存在感を示しサトウキビ作機械化に貢献している者がいる。試験研究機関の技術者として地道な活動を行い、宮古島で普及しつつあるサトウキビ側枝苗の小型移植機を開発したS氏などは特筆できる事例である。(S氏は平成15年度創意工夫功労者として文部科学大臣から表彰された。)
 一方、公開研修を受講して農業機械士に認定された方々のほとんどは、サトウキビ作の関係者と考えて間違いない。ここ数年の受講者の動向を見ると、サトウキビ生産法人やサトウキビ収穫機等導入事業主体および農業機械銀行等農作業受託組織の関係者が圧倒的に多く、これらは農業機械士の資格をすぐに必要としている方々である。これらの受講者が現場に戻って、サトウキビ機械化に活躍している状況はあえて確認するまでもなく容易に察することができる。受講者の中には、直接現場で活動する方々のほかJAや普及センター、研究機関の技術者なども含まれているが、これらは指導者として別の角度からサトウキビ作機械化をサポートしている。
写真3
写真3 トラクタ耕競技大会の様子1
写真4
写真4 トラクタ耕競技大会の様子2
(2) 農業機械士の組織活動
 農業機械士に認定された方々は、それぞれの地域において農業機械士の組織化を図り、積極的な組織活動を展開している。現在では沖縄県農業機械士協議会のもと北部、中部、南部、宮古、八重山の5支部、さらに南大東島、北大東島、粟国島、久米島、与那国島の5離島協議会が存在する。主な活動内容は 1)農作業事故ゼロ推進(集落講習会、巡回指導、危険箇所調査) 2)農業機械保守管理共励会の開催 3)農業機械士技能向上研修の開催 4)トラクタ耕競技大会の開催(写真3、4) 5)農作業事故が発生した場合の事故事例の細密調査などである。組織率が20数パーセントと低いことが課題であるが、農業機械士活動を根底で支える組織であることに変わりはない。
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3.今後の方向

 これまでに述べてきたように、沖縄農大の教育研修と沖縄県のサトウキビ作の機械化は直接的(公開研修)にあるいは間接的(養成部門)にかかわりあってきた。現状のままでも沖縄農大が一定の役割をとりあえず果たせることは間違いないであろう。ただ今は、政府が進めている農業改良助長法の改正により平成17年度から普及事業が大きく改編されることに伴い、それに呼応する形で農業大学校における教育研修のあり方も問われている。このような状況に鑑み、よりよいシステムで効果的なサトウキビ作の機械化を進めるためにいくつか提案を行いたい。

(1) 試験研究機関との併設
 現状では沖縄農大は試験研究機関と切り離して設置されているが、外部講師の確保や未整備の施設などの問題を解決するため農業試験場と併設することが望ましい。他府県においては併設されている事例も多く、施設や人材を共有することでのメリットは非常に大きいと考える。
 例えば、サトウキビ収穫機オペレータ養成研修の実習ほ場が容易に確保できるなどのほか、農業機械関連の施設についていえば、他府県のほとんどの農大で整備されている大型特殊自動車運転免許取得のための練習コースが沖縄農大は未整備であり、耕耘作業やその他の作業機の練習用のほ場も不足しているが、併設によりこれらの問題が容易に解決できる。

(2) サトウキビ研修センターの設置による体系的な支援
 サトウキビは沖縄の基幹作物であり他産業への波及効果も高いことから、これを守るための種々の施策が実施されている。現状では基盤整備や農業機械の導入などハード的な支援に重点が置かれ、栽培技術や農業機械の利活用などソフト面での施策が不十分であるように思う。ソフト面については沖縄農大、沖縄県糖業農産課、各農業改良普及センター、農業試験場、JA、沖縄県糖業振興協会などがそれぞれの事情や都合で関連がないまま個別に研修や講習会などを開催しているようにも見受けられる。今後重要になってくるソフト面の支援については、沖縄農大の研修部門に「サトウキビ研修センター」を位置付け、サトウキビに関する研修を一元化し体系的な支援を行うことが効果的であろう。もちろんこの場合にも前項の試験研究機関との併設が前提であり、それによって研修効果が高まることが理解できるだろう。

(3) 畑作課程(サトウキビ機械化コース)の新設
 サトウキビは基幹作物と言いながら沖縄農大にサトウキビに関連するコースがないというのも不自然である。兼業が多くサトウキビでは自立できないという認識が支配的な現状ではやむを得ないとの見方もできるが、最近では、サトウキビ生産法人に代表されるように儲かるサトウキビ作を目指した経営体の育成を施策的に進めているところであり、離島を中心にサトウキビで自立している事例はまだまだ多い。当然これらの経営体の担い手を養成する必要性はあるはずで、サトウキビの生産が漸減しているとはいえ、耕種部門では依然として粗生産額トップをキープしていることに変わりはない。
 サトウキビ作を守るという立場に立てば、沖縄農大に関連コースがあって当然であろう。そういう意味で養成部門に「畑作課程(サトウキビ機械化コース)」を新設することを提案したい。あえて「機械化コース」とするのは、農業の機械化が土地利用型作物を中心に進展してきたことは周知の事実であり、これからのサトウキビ作についても機械化を抜きにしては考えられないからである。また、実際の担い手以外に、農業機械のディーラーの技術者や関連する機関の農業機械技術者を養成する意味も含めている。そして、免許や資格取得に主眼をおいた現行の農業機械教育の水準を、本当の意味でハイレベルなものにしていきたいという筆者の願いも込めている。
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4.おわりに

 沖縄県は平成17年度に行われる普及事業の改編を先取りする形で、今年度から農業機械専門技術員を廃止した。機械化を沖縄農業発展のキーワードにしながら体制が後退していく現実は、農業機械行政の一端を担ってきた者としては残念でならない。沖縄農大の農業機械研修計画も専門技術員による支援を前提としていることから、研修実施が後退しないか懸念されるところである。
 一般的な行革の流れの中で考えると筆者の提案も実現にはほど遠いものであるのかもしれないが、沖縄の特殊性に配慮した施策や事業を活用することで実現の可能性もあると思うのである。
 生産量が減少しているサトウキビ作を再生するためには機械化の推進は不可欠であろう。とりわけ、補助事業等によるハード面の支援以上に機械の導入や利活用に関するソフト的な支援が今最も求められていると思う。
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