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都市型生活における飲料からの多様な糖類摂取パターンとその健康増進作用

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2004年12月]

【調査・報告〔砂糖/健康〕】

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 教授
高野 健人


I はじめに  II 方法  III 結果
IV 結果の要約  V 考察


I. はじめに
 ストレス負荷の多い都市生活において、生活様式の多様化に伴い砂糖を含有する飲料摂取のパターンは複雑になっている。糖質と健康との関連では、過度の摂取によるカロリー過多に伴う肥満、糖尿病、その他、いわゆる生活習慣の発症が懸念されている一方で、FAO/WHOの報告では、「砂糖を含む炭水化物が生活習慣病の発症に直接関連する証拠は乏しい」と結論され(Lineback.1998)、必ずしも科学的な結論は得られていない。近年注目されているグリセミック指数(GI)が炭水化物や糖類の種類によって異なるように、その健康影響は多様であることが予想される。また、過度なダイエットによるカロリーや栄養素の摂取不足による健康影響も大きな問題となっている。適当な砂糖類を適度に摂取することは健康水準に好ましい影響を与えることが考えられるが、近年多様化している砂糖摂取、特に飲料からの糖質摂取と健康との関連性について知るところは少ない。
 本研究は、都市生活者において、多用な飲料からの糖質摂取を類型化および定量化し、そのライフスタイル、身体的健康状態およびストレス関連要因との関連性を分析し、都市生活者の基本的な社会人口学的属性を考慮した上で、飲料からの糖質摂取と健康状態との関連性を明らかにすることを目的とする。
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II. 方法

1. 対象
 大都市(A地区)および地方都市(B地区)を対象地域に、住民台帳により層化無作為に抽出した各386名(20〜69才:平均年齢46歳)を調査対象とした。調査員が各家庭を訪問し、調査についてのインフォームドコンセントを得た後、以下の調査を行った。

2. 調査方法
(1) 飲料摂頻度調査
 飲料の摂取頻度は、食品摂取頻度記録システム(food frequency reporting system)を用いて、自宅や喫茶店等における自家製飲料(brewed drinks:以下、「自家製飲料」という)とペットボトル等の市販飲料(bottled/packaged drinks:以下、「市販飲料」という)の摂取量により把握した。
「自家製飲料」については、紅茶、コーヒー、生果実ジュース、生野菜ジュースを糖質が含まれる飲料とし、それぞれについて、摂取頻度を「1日5杯以上」、「1日3〜4杯」、「1日1〜2杯」、「週3〜4杯」、「週1〜2杯」および「ほとんど飲まない」の6段階として調査した。紅茶およびコーヒーについては、砂糖の1杯あたり入れる砂糖量をスプーンの杯数で調査した。一方、「市販飲料」については、野菜飲料、果実飲料、炭酸飲料(サイダーなど)、牛乳、砂糖入りコーヒーのそれぞれについて、摂取量を「週1リットル以上」、「週500ml〜1リットル」、「週200〜500ml」、「週200ml未満」および「飲まない」の5段階として調査した。
(2) 健康調査
 基本的属性(性、年齢、居住地域)の他、身長・体重(自己申告)、生活習慣(喫煙)、自覚的健康度、ストレスの有無、慢性疾患の既往歴について調査し、血圧測定を行った。自覚的健康度は「よい」から「よくない」までの5段階、ストレスの有無は「大いにある」から「まったくない」までの4段階として調査した。慢性疾患の既往歴は、高血圧、高脂血症、糖尿病、肝機能異常を対象とした。

3. 解析方法
(1) 各飲料の糖質摂取効果に基づく解析
 自家製飲料については、6段階の摂取頻度に応じて500、350、150、50、20、0を乗じてそれぞれの飲量(g/日)を算出した。市販飲料については、5段階の摂取量に応じて179、107、50、14、0を乗じて飲量(g/日)を算出した。
 自家製飲料と市販飲料の糖質含有量は、五訂食品成分表(香川、2003)を基に算出した。なお、自宅での飲料摂取量での糖質摂取量の算出における紅茶およびコーヒーについては、使用する1杯当たりの砂糖量(スプーン1杯=3g)より算出した。
 上記結果に基づいて、糖質摂取効果の比較的高いと思われる糖質を含む飲料を再分類すると以下のようになった。
[1]  コーヒー・紅茶
ア 自家製の砂糖入りコーヒー・紅茶
イ 市販の砂糖入りコーヒー
[2]  ボトル・パック他
砂糖入りコーヒーを除く市販飲料
(野菜、果実飲料、炭酸飲料など)
[3]  実・野菜ジュース
自家製の生果実・野菜ジュース
 [1] から [3] について、すべての糖質を合計し、糖質総摂取量を算出した。
(2) 上記 (1) で絞り込んだ飲料について、基本的属性(性、年齢、地域)と糖質摂取量の関係は平均値の比較(t検定)または相関分析にて行った。血圧、BMI、生活習慣、自覚的健康度、ストレス、既往歴と糖質摂取量との関連の分析は、性、年齢、居住地域を独立変数に加えた重回帰分析または一般線形モデル分析(General Linear Model:GLM)を用いて行った。生活習慣は喫煙、自覚的健康度は「よい」(「よい」、「まあよい」)と「ふつう以下」(「ふつう」、「あまりよくない」、「よくない」)、ストレスの有無は(「大いにあり」(「大いにある」)と「なし」(「多少ある」、「あまりない」、「まったくない」)、既往歴は高血圧、高脂血症、糖尿病または肝機能異常の既往があるか否かに区分し、飲料群別に糖質摂取量を比較した。統計学的分析にはSPSS11.0Jを用いた。
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III. 結果

1. 調査対象地域の状況(表1)については、
(1) 糖質摂取量は、「コーヒー・紅茶」は4.9g、「ボトル・パック他」は5.2g、「果実・野菜ジュース」は3.8g、総摂取量は13.9gであった。平均値に比較した大きな標準偏差(SD)から、糖質摂取量は個人差が大きいことが示された。
(2) 喫煙者は35.2%、自覚的健康度のふつう以下の者は43.8%、ストレスが大いにある者は15.0%、既往歴のある者は33.7%であった。

2. 飲料の種類と性別、年齢等との関係(表2)については、
(1) 「コーヒー・紅茶」は男性が、「ボトル・パック他」および「果実・野菜ジュース」は女性が多い傾向にあった。
(2) 年齢と糖質摂取量はいずれの飲料の種類においても有意な負の相関が認められた。(年齢が高くなれば、糖質摂取量は減少)

3. 飲料の種類と血圧、BMI、自覚的健康度等との関係(表3)については、
(1) 血圧およびBMIについては、いずれの飲料の種類においても糖質摂取量との間で統計学的に有意な関連はなかった。
(2) 他の健康指標(喫煙、ストレス等)と糖質摂取量との間で、いずれの飲料の種類においても統計学的に有意差はなかった。
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IV.結果の要約

1.  飲料群別の糖質摂取量は個人間の差異が大きく、また、いずれの飲料群による糖質摂取量も年齢と負の相関があり、統計的に有意ではないものの、性、年齢、居住地域を調整した上での健康指標と飲料からの糖質摂取の関連では、血圧と肥満度が高いほど、「コーヒー・紅茶」からの摂取が低い傾向が認められた。
2.  同じく、基本的属性を調整した上で、生活習慣、自覚的健康度、ストレス、既往に関する健康指標と飲料からの糖質摂取量との関係に一定の傾向は認められなかったが、基本的特性と関連する大きな個人間の摂取量の差異、個人の属性および健康指標と飲料群別の糖質摂取量との多用な関連性が示された。
3.  今後、糖質摂取状況ならびに、栄養摂取状況、ライフスタイル、ストレス関連要因を説明変数とした多変量解析を行い、これにより、栄養摂取状況、生活習慣の相互作用の影響を調整した、糖質摂取の独立した健康増進効果を明らかにする必要がある。
表1 基本的属性、飲料による糖質摂取量、健康指標
表1
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V.考 察
1.調査対象地域における住民の飲料からの糖質摂取量は、平均で13.9gとなった。平成13年度国民健康栄養調査の結果、1日の炭水化物摂取量の平均値は274.1gであり(健康・栄養情報研究会、2003)、本研究の結果と合わせると約5%が飲料からの摂取と推計された。また、飲料からの糖質摂取量は個人により大きなばらつきがあることが示された。
2.本調査から糖質摂取量は、女性より男性、地方都市より大都市住民が多く摂る傾向にあり、年齢と有意な負の相関がみられた。
 「ボトル・パック他」による糖質摂取量は、「コーヒー・紅茶」による糖質摂取量と同様に地方都市より大都市住民が多く摂る傾向と年齢と有意な負の相関がみられたが、男性より女性が多かった。「果実・野菜ジュース」による糖質摂取量は、地方都市が大都市住民より、女性が男性より多く摂る傾向があり、年齢と有意な負の相関がみられた。これらの結果、飲料からの糖質摂取量の大きな個人差の背景として、居住する地域、性別、年齢などにより影響を受けることが確認された。
3.飲料の種類と健康指標との関係については、統計学的に有意ではなかったが、飲料からの糖質摂取量が、性や年齢により異なることを考慮すると、これらの属性による影響の違いを考慮した上で、飲料からの糖質摂取量の健康影響の分析が必要であることが示された。
4.糖類摂取の健康影響については、慢性疾患への影響を中心に多くの議論がある。糖尿病との関連について、半数の研究が糖類そのものの糖尿病の原因としての役割に否定的であったとしている(Lineback. 1998)。また、近年注目されているグリセミック指数(GI)は、糖質を含む炭水化物が消化されて血液中に糖として入り込むために必要な時間を指標化したもので、この値が低い食物は食後の血糖上昇とインスリンの反応を低下させるとされている(Lineback. 1998)。糖尿病や耐糖能異常を持つ者にとって、シリアルやパスタに加えて、フルーツや野菜は炭水化物の食源として適当であることが指摘されている(Lineback. 1998)。砂糖が活動・認識のパフォーマンスを高めるという点については、メタアナリシスの結果、これらの関係を十分に支持する結果は得られていないが(Wolraich, Wilson, White. 1996)、グルコースの投与により記憶力の向上があることが示されている(Gender-Frederick, Hall, Vogt. 1987)。このように、糖質を含む炭水化物の摂取は、その多様性を考慮した摂取方法により、健康にポジティブな働きを持つ可能性が指摘されている。
表2 飲料からの糖質摂取量と基本的属性との関連
表2

表3 健康指標と飲料からの糖質摂取量との関連:重回帰分析および一般線形モデル分析の結果
表3

【参考文献】
1. Gender-Frederick, L.A., Hall, J.L., Vogt, J. Memory enhancement in elderly humans: effects of glucose ingestion. Physiology and Behaviour 1987; 41: 503-4.

2. Lineback D. Carbohydrates in human nutrition. (FAO Food and Nutrition Paper - 66). Food and Agriculture Organization of the UN (FAO). 1998.

3. Wolraich, M.L., Wilson, D.B., White, J.W. The effect of sugar on behavior or cognition in children: A meta-analysis. Journal of American Medical Association. 1995; 274: 1617-21.

4. 香川芳子監修. 五訂食品成分表. 女子栄養大学出版部. 2003.

5. 健康・栄養情報研究会. 国民栄養の現状 平成13年厚生労働省国民栄養調査結果. 第一出版. 2003.

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「今月の視点」 
2004年12月 
お菓子の世界へようこそ 〜お菓子産業の現状と課題について〜
 全日本菓子協会 専務理事 奥野 和夫
都市型生活における飲料からの多様な糖類摂取パターンとその
  健康増進作用
(平成15年度砂糖に関する学術調査報告から)
 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 教授 高野 健人


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