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砂糖の正しい知識を

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


今月の視点
[1999年8月]

和洋女子大学 教授
坂本 元子


1.糖質の栄養  2.糖と人の行動
3.糖と脳の働き  4.コーヒーと砂糖


はじめに

 人は古い時代から、食品について、生活の知恵と科学により、人体にとっての必要性と摂取の仕方を学んできた。しかし最近、食品の摂取が嗜好に流れ、生理的に適しない食べ方をすることによって、食事は本来の食品のもつ栄養的な役割や生理的な必要性を乱すようになってきている。
 体に良いと言われても過剰な摂取は良くない。適量摂取で心身の健康が維持されるということの再確認が改めて重要になっている。最近とみに悪ものとして取り上げられているものに糖分があるが、正しい知識と判断で健康保持のために活用する必要があるのではないだろうか。

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1.糖質の栄養

 糖質は3つの種類に分けることができる。単糖類といって糖質の最も小さい単位の構造をもっているもの、次にこの単位が2つつながった構造をもつ二糖類、そしてこの単位の構造が3つ以上つながった構造をもつもので多糖類という。

単糖類
 この構造をもつ糖類には、ブドウ糖や果糖がある。糖質が摂取、消化され、この単位の形になって吸収される。したがって、この形が最も早く吸収され、エネルギーになる形である。

二糖類
 これにはショ糖(砂糖、原料はさとうきび及びてん菜)や乳糖(乳の成分)がある。母乳や牛乳が甘いのは乳糖が入っているからである。砂糖はブドウ糖と果糖が結合した二糖類である。  したがって、砂糖も分解が早く、体内に入ると速やかに吸収されてエネルギーとなることができる。疲れている時は、速効性のエネルギー源として大変役立つものである。

多糖類
 これにはでん粉や穀類、芋類に含まれる糖類がある。日常食べるご飯や麺類に含まれるもので、単糖類に消化されるまでに少々時間がかかるので吸収されるまでには時間がかかる。多糖類は人間の体にもあり、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして貯蔵され、エネルギーの源になっている。また、人間の細胞、骨、腱なども多糖類でできていて体を支える力となっている。
 糖類の栄養学的特徴は、甘味を呈し速効性のあるエネルギー源ということになろう。


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2.糖と人の行動

 最近の子どもの多動的行動や精神的な緊張による疲労は、「キレル」と表現されており、その原因が砂糖や甘いお菓子の過剰摂取によるものだとする誤った説が依然流されている。この説に関する歴史は古く、1922年にはアメリカのShannonが「砂糖を含む食物は行動に好ましくない効果を与える。」と発表し、1947年にはアメリカRandolphが「精神的緊張疲労症候」という説を立てて、Shannonを支持している。1970年代には専門外の文献に、「砂糖の摂取によって低血糖多動症と呼ばれる状態になる。」という論文が掲載され、砂糖は感情を昴らせる作用があるという説が出てきた。
 この「仮説」は、「子どもの場合はインスリンの分泌が敏感で、糖を一度にたくさん食べることでインスリンが過剰に分泌され、一時的に低血糖になる。」というものである。低血糖になる一方で、脳の機能を司る神経伝達物質のうち、セロトニンと呼ばれる物質が過剰に出て、多動症や疲労症の原因になるのではないかというものである。
 FAO/WHOは、この仮説について実験されている多くの文献から、その信憑性を検証した。この検証に用いられた実験は、かなり厳しい条件で実施されている。
 第1の条件は、砂糖を含む食べ物や飲み物を与え、一方に対照群として人工甘味料を含んだ物を与えていることである。誰に何を与えたか、両親や教師、子どもにも知らせない二重盲検方式で実施され、これらの食べ物を与えた後、数時間の子どもの行動が観察された。対象は、就学前の子どもから思春期の子どもを含む年齢層とされ、さらに、もともと過剰な行動をもつ子ども、注意力散漫な子ども、攻撃的な子ども及び怠慢な子どもたちは対象から除外された。
 第2の条件は、甘味材としてショ糖が用いられたということである。
 第3の条件は、試験食事の内容であり、特に注意されているのは糖とたんぱく質の比率、糖と脂肪との比率である。多くの違った食事試験のプロトコール(実験計画)があり、食事コントロールのないものから特に厳しくコントロールされた試験まで多様であった。
 最後の重要な条件は、精製された砂糖を用いた実験の効果の測定法である。多くの測定指標として焦点が当てられたのは、砂糖投与後の短い時間に他の子どもに比較して興奮した行動の変調がみられた子ども、衝動的な行動や運動活動が増加した子どもであった。観察に当たったのは、教師や両親であり、子供たちの行動が細かく観察され、心理学的な手法や神経心理学的測定法により記録された。警戒心、衝動性、記憶、運動技術なども測定されている。これらの観察は、二重盲検試験であり、客観性の高いものである。これらの膨大な23の実験は、1982年から1994年にわたって実施され、全ての成果を解析した結果、上記「仮説」を支持する結果は得られなかった。FAO/WHOは、結論として、「砂糖は子どもの認識行動や行動を変えるという仮説は証明できなかった。」としている。
 「もし、子どもの行動に問題があるとすれば、それは彼らの生活に潜む何らかの理由があると見るのが重要で、その存在を探り、より厳密にその治療のための介入を図るべきである。」としている。
 これらの長年にわたる世界の研究者による実験の結果と研究の成果は、「砂糖と子どもの行動」として刊行され、世界に報告されている。
 子どもの異常行動には、家庭を含めた子どもの環境が背景にあることを認識すべきであろう。

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3.糖と脳の働き

 我々の体の中で糖を必要としている臓器はどこだろう。最も多く糖を必要としているのは脳である。勿論、脳以外の臓器でも赤血球や腎臓の髄質、精巣などはブドウ糖しかエネルギーとして使っていない。また、筋肉もブドウ糖をエネルギー源として使っている。
 昼夜の別なく働く脳のエネルギーをブドウ糖のみで賄っているとすれば、脳を正常に働かせるには常に脳が必要とするブドウ糖を補給しなければならない。脳へブドウ糖を運ぶ方法は我々の毎日の食事からである。脳のエネルギーを論じるには、まず1日の食事の在り方から入る方が理解しやすい。
 先に述べたFAO/WHOの報告の中に、砂糖のもう1つの働きとして「ブドウ糖と記憶」について論評したものがある。ブドウ糖の投与によって人やラットの記憶力が増強するという実験結果があり、特にその効果は高齢者において強くみられるとするものであり、ブドウ糖投与と記憶過程の改善の関係が明らかにされている。
 この上に立って、糖分の摂取と脳の働きとの関係について述べたい。
 生理学的に明らかなことは、脳の活動には多くのエネルギーが必要であること、またその主要なエネルギー源はブドウ糖であることである。脳の重量は体重の約2%であるが、消費するエネルギーは体全体のエネルギー消費量の約20%で、大変なエネルギーを必要としている。人が生きるためのエネルギー源となる栄養素には、たんぱく質や糖質、脂質があり、エネルギー放出量は脂肪が最も多いが、残念ながら脳が必要とするエネルギー源はブドウ糖だけである。
 最近では、ペプチドという分子量の小さいたんぱく質が脳のエネルギーを司っているという説もあるが、現在のところ脳の主要なエネルギー源はブドウ糖である。
 脳が使うエネルギー源のブドウ糖は、1日当たり120gとされており、1gの糖のエネルギー放出量を4kcalとすると、脳は1日480kcal、約500kcalを使っていることになる。ブドウ糖を必要とする臓器は、他にも赤血球や腎臓の髄質、一部の筋肉があり、1日に必要なブドウ糖の量は約150gといわれている。これらのブドウ糖は食事から確保されるが、1回の食事で肝臓に貯蔵できるブドウ糖の量は約60といわれており、1日に必要なブドウ糖を得るためには、1日3回の食事で定期的にブドウ糖のもとになる食品を摂取する必要がある。
 摂取された糖類は分解されてブドウ糖になり、吸収されて血液の中に入る。血液中のブドウ糖は全血液中に5g位であるが、5gのブドウ糖は約1時間で消費されてしまう。
 一方、摂取したブドウ糖は、筋肉や肝臓でグリコーゲンという形で貯蔵される。血液中のブドウ糖は、血液が全身を回っているうちに消耗してくるので、貯蔵したグリコーゲンを分解してブドウ糖へ戻し、脳や全身に送らなければならない。しかし、グリコーゲンからブドウ糖への分解には時間がかかる上に、グリコーゲンから一度乳酸へ変わってから肝臓へ送られ、そこでブドウ糖へ変わるので効率が悪く、すぐに脳へ送ることはできない仕組みになっている。
 したがって、脳を効果的に働かせるには、1日3回の食事を定期的に摂取し、血液中のブドウ糖濃度を一定に保ちながら脳へ運び、十分にエネルギーを与えることが大切である。
 例えば、朝食を抜いたとしよう。前夜食べた食事から約60gのグリコーゲンが肝臓に蓄えられるが、翌朝はそのグリコーゲンはなくなる計算になる。また、血液中のブドウ糖濃度が減少して脳へ入りにくい状態になり、脳のエネルギー源がなくなって働かないことになる。食事を抜くことは、脳へのエネルギー補給ができないことになり、記憶の過程に影響を与えることにもなりかねない。

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4.コーヒーと砂糖

 格好良くコーヒーを飲む人やダイエットを試みる人の行動には、「コーヒーはブラックで。」という気持ちが強い。コーヒーは嗜好食品であるから個人の好みにあった飲み方で楽しむにこしたことはないが、「3時頃にややお腹も空いたし、頭休めにコーヒーでも」という場合には、是非砂糖を入れたコーヒーをお勧めしたい。
 昼食後の血液には、十分なブドウ糖があり、脳や全身に運んでエネルギーを作っているが、3時間もすると血液中のブドウ糖の量は低下してくる。夜の食事までには時間があるので、補充が必要になる。そこで人は間食を摂ることになる。コーヒーにはカフェインが入っていて、血液を通して脳関門を通り、中脳を刺激する。そのために、疲労がとれたような気になったり、気分もやや高揚してくる。しかし、エネルギーのない状態では脳は働かないことになる。このような時に、ブドウ糖を体の中に入れると脳は働き始める。つまり、3時のお茶の時間にはコーヒーに砂糖を入れるか、甘いお菓子で糖分を補給するかが必要になってくる。
 定期的に糖を補給することは、脳の発育や脳の働きに必要なことである。栄養状態が極度に悪い子どもでは知能の発育も遅れることが発展途上国で証明されている。このような子ども達には、療法として1日6回の食事が与えられる。朝6時、10時、12時の昼食、3時のおやつ、6時の夕食に10時の夜食と、6回の食事を与え、脳へのエネルギーの補給を怠らない。さもなければ、子ども達の知能の発達が遅れてくるからである。
 糖をだらだらと間断なく摂取することにも問題があるが、補給が途絶えることにも問題があって、脳の働きに異常をきたす。食事は規則正しく、3時のおやつには糖分の摂取を、というのが人の健康を守る望ましい食べ方のようである。

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「今月の視点」 
1999年8月 
「砂糖の正しい知識を」
  和洋女子大学 教授 坂本元子
アイスクリームと砂糖
  (社)日本アイスクリーム協会 事務局長 平山 寛
沖縄の農業・農村の多面的機能評価について
  沖縄県農林水産部


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