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沖縄のサトウキビと緑肥(1)

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2003年3月]
 サトウキビは根が深く伸び、そこから水を吸収し、葉で光合成をした炭水化物から糖分を茎に蓄積し成長します。葉の働きや根を深く伸ばすには、正しい栽培管理が必要です。その中でも見逃しがちなのが地力の維持、増進です。沖縄県のサトウキビ生産振興計画でも土づくりと地力の維持・増進を普及指導項目として、土壌の診断や緑肥作物の選定栽培指導が行われています。今月はサトウキビ栽培における緑肥作物の意義について紹介します。

沖縄県農業試験場 土壌保全研究室 研究員
宮丸 直子


1.はじめに
2.サトウキビ畑の地力
3.緑肥とは
4.マメ科植物と根粒菌による窒素固定
5.緑肥の多面的効果


1. はじめに

沖縄県の位置
沖縄県の位置
 沖縄本島から約300km南西にある宮古島は、農耕地面積の65.7%(平成12年度)がサトウキビ畑であり、県外から訪れた人は「サトウキビの島だなぁ。」という印象を受けることが多いと思います。しかし、春から夏にかけては、サトウキビではない植物が、島のあちこちで見られます(写真1)。それは背の高いマメ科の植物であったり、つる性の植物であったり、一面のヒマワリ畑も出現します。「この植物は何ですか?」「どうしてヒマワリを栽培してるんですか?」等、様々な質問を受けますが、これが、サトウキビ畑の緑肥です。沖縄では土づくりのために、マメ科植物を緑肥として栽培してきました。ヒマワリ等、マメ科以外の植物も最近は利用されています。これらの緑肥について、沖縄における現状や市町村の取り組み、試験研究等、いろいろな面から紹介していきたいと思います。
クロタラリア
クロタラリア
ヒマワリ
ヒマワリ
富貴豆
富貴豆
写真1 宮古島で見られる緑肥作物
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2. サトウキビ畑の地力

図1 グラフ
図1 サトウキビ畑土壌中の腐食含量の変化
 「土が痩せてるからねぇ、緑肥で土づくりをしてるんだよ。」緑肥を栽培している農家は、よくそんなふうに話します。沖縄には、主に、国頭マージ、島尻マージ、ジャーガルという3種類の土壌があります(写真2)。国頭マージは酸性の赤黄色土で、島尻マージは弱酸性からアルカリ性の暗赤色土、ジャーガルはアルカリ性の灰色台地土ですが、どの土壌も他県の黒ボク土壌などに比べると腐植含量が低いです。亜熱帯性気候であるため、有機物を投入しても分解が速く、なかなか腐植含量が増加しないのです。沖縄県農業試験場の土壌保全研究室では、昭和54年から県内に220地点の定点を定めて、5年ごとに土壌調査をおこなってきました。ちょうど国勢調査のように、5年ごとに農地の理化学性の変化を調べているのです。残念ながら、サトウキビ畑土壌の腐植含量は、過去20年間増加していません(図1)。また、アンケート調査も併せて実施していますが、有機物の投入量も年々減少しており、農業従事者の高齢化による労働力不足等が原因ではないかと考えられます。サトウキビの単収増加のためには、いろいろな要因がありますが、緑肥や堆肥等、有機物の持続的な投入による土づくりも、とても重要です。
国頭マージ
国頭マージ
島尻マージ
島尻マージ
ジャーガル
ジャーガル
写真2 沖縄県の主な土壌の断面
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3. 緑肥とは

空気の組成
図2 空気の組成
 緑肥とは、文字どおり「緑の肥料」であり、土づくりのために休閑期に栽培し、堆肥と違って腐熟させずに生のまま畑に鋤込む作物です。県外では、緑肥と言うとイネの収穫後に栽培されるレンゲを思い浮かべる人が多いと思います。しかし沖縄は、水田はとても少なく、ましてレンゲが栽培されることもありません。沖縄の緑肥は、サトウキビの夏植え前に栽培されることが多いです。春、収穫後に緑肥を播いて、梅雨時の雨を利用して生育させ、夏のサトウキビ植え付け前に鋤込みます。現在、よく栽培されている緑肥はマメ科のクロタラリアですが、18世紀に書かれた沖縄の農書にも「緑豆や下大豆(沖縄在来の大豆)など、豆類を鋤込むとサツマイモがよくできる。」という記述があり、古くからマメ科植物が緑肥として使われていたことがわかります。では、どうしてマメ科植物が緑肥として利用されるのでしょうか。
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4. マメ科植物と根粒菌による窒素固定

 窒素は、リン酸、カリウムと共に肥料の三要素と言われ、植物の生育には欠かせない重要な成分です。また、空気の約80%は窒素ガスであり、私達の周りに大量に存在している元素でもあります(図2)。しかし、空気にたくさん含まれている窒素ガスは、そのままでは植物は吸収することができません。そこで、化学肥料などで窒素を施肥するのですが、人間が窒素ガスから化学肥料を作るためには、数百℃の高温と数百気圧の高圧が必要になります。しかし自然界には、目に見えないくらい小さな細菌の中に、空気中の窒素を常温常圧の条件で有機化し(窒素固定という)、植物が使えるようにすることができる細菌がいるのです。その中でも根粒菌は、マメ科植物の根に根粒をつくって生息し、空気中の窒素を固定して植物に供給します。そして、植物からは光合成でつくられた炭素化合物を受け取り、両者は助け合って共生しています。そのため、マメ科植物は痩せた土でも生育でき、窒素肥料をそれほど必要としないのです。古くから人は、このマメ科植物と根粒菌の共生によって固定された窒素を、植物体を鋤込むことによって土壌に供給し、次作の肥料として利用してきたのです。ちなみに根粒は、植物の種類によって、丸かったり、手のひらのような形だったり、縞があったり、いろいろな形をしています。マメ科植物を見つけたら、そっと掘り起こして根粒の形も観察してみてください。
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5. 緑肥の多面的効果

緑肥の根
写真3
地中深くまで伸びている緑肥の根
 緑肥はサトウキビ畑の土づくりに重要であることをこれまで述べてきましたが、それ以外にも、多様な効果があります。まず、緑肥を栽培すれば、光や養水分の競合によって雑草を抑制します。さらに、緑肥の中には、アレロパシー(植物が出す化学物質が他の植物等の生育に影響を及ぼす現象)により、雑草の生育を抑制するものもあります。また、畑面を覆うことによって、沖縄で大きな問題となっている赤土流出を防止します。直根性の緑肥は根が1m近くまでも伸びることがあり、作土ばかりでなく、下層土の土壌も改善されます(写真3)。最近、緑肥としてのヒマワリ栽培が増えてきましたが、一面のヒマワリ畑は地域住民や観光客に大好評で、景観向上の効果もあります。このように、緑肥には「一石二鳥」より、もっとたくさんの効果があるのです。

 今回は、緑肥による土づくりの基本について紹介させていただきました。次回は、サトウキビ畑で利用されている数種類の緑肥について、その特徴やエピソードを紹介していきたいと思います。





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「今月の視点」 
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沖縄のサトウキビと緑肥 (1)
 沖縄県農業試験場 土壌保全研究室 研究員 宮丸 直子


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