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清涼飲料水と砂糖〜甘味離れ? 砂糖離れ?〜

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2004年9月]

前(社)全国清涼飲料工業会専務理事
(現 農林水産政策情報センター 調査局 調査役)
芳田 誠一


はじめに
1.2001年の或る出来事
2.砂糖離れを示したのは、この前から
3.でもその前にもう一度 清涼飲料水とは?
4.清涼飲料の変遷と推移
おわりに ― 蛇足かもしれないが


はじめに
 次(図-1)のグラフをちょっと見てください。
 清涼飲料には、どんなものがあるのか、どんなものが伸びているのか、また逆に、どんなものの需要が落ちているのかが、一目瞭然です。
図-1 清涼飲料品目別生産量推移(1986年〜2003年)
図-1

 砂糖との関係は、どう読み取っていくのでしょうか?先ずは、2003年現在を、概観してみましょう。
 一番多い茶系飲料緑茶ウーロン茶が主体ですので、当然甘味料或いは砂糖を必要としていません。
 しかし、紅茶飲料も、これに含まれますので、全てが無糖ではありません。これは砂糖との関りで、少し内訳を詳しく見ておきましょう(図-2)。砂糖(甘味料)の使われていないものがやはり多いですね。
図-2 茶系飲料(内訳別)の生産量(昭和59年(1984)〜平成15年(2003))
図-2
 図-1に戻りましょう。
 2001年に炭酸飲料を抜いて、品目別シェア2位に躍り出たコーヒー飲料は、今なお有糖が優位を保っているものと思われますが、嗜好の多様化を反映し、ブラック(無糖)やら微糖も出現。今後の砂糖のニーズは、どうなるのでしょうか。
 いずれにせよ、以下4品目には、甘味料が使われていますが、品質特性等に応じ砂糖だけではなく、異性化糖その他の甘味料も使われているようです。
 その踏み込んだ分析は、筆者の手に余りますので、それは砂糖の生産者、販売者等読者に委ねたいと思います。
 次のミネラルウォーターは、当然無糖ですね。
 といった具合に、清涼飲料のうちには、無糖のものが、ずい分あります。
 このような現象が、何時から起きてきたのか?その原因は?そして今後は?といったことについて少し調べて、御参考になればと、以下書き記します。
 結論は出ないでしょうが、砂糖に関心をお持ちの読者に、何らかのヒントを、少なくとも一つぐらいは、提示できるのではないかと思います。
 それでは、しばらくお付き合いを。
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1.2001年の或る出来事
 2001年は、生産総量1,586万kl、1,600万kl越え(翌2002年は、1,617万kl)も、もうすぐという年でした。
 内容的には、図-1に見るよう、コーヒー飲料が(伝統的な清涼飲料ともいえる)炭酸飲料を抜いて、シェア2位に躍り出た年でした。
 これに見られるように、この年は、清涼飲料の品目別の消長がはっきりしてきた、また、甘味離れを象徴する出来事の発生した年でした。
 同年9月28日、毎月恒例の総務省消費者物価指数の公表が行われました。
 このとき、清涼飲料の世界の変わり目を象徴するエポックメーキングな出来事があったのです。
 清涼飲料の象徴(だった?)とも言えるサイダーが以後、調査対象品目から外れることになったのです。
 1946年8月にこの調査が発足した当時、飲料に係る消費者物価調査対象品目は、番茶(葉っぱそのもの。緑茶でないところがまた戦後の苦しい時代の一面を示していて面白い。)と、このサイダーだったことを思い浮かべれば、感慨ひとしおといったところでしょう。

(注)商品の移り変わりの激しさが常態となってしまっている清涼飲料業界では、余り注目されなかったのだが、当時この業界に身を投じて2〜3ヶ月の筆者にとっては、極めて印象的であったので、或る担当者に頼んで、機関紙「清飲通信」(H13.11.1第1290号)に、紹介記事を書いてもらいました。

 更に印象深いのは、同時に、ミネラルウォーターコーヒー飲料が、新たに対象品目として追加されたことです。
 「…これらが、日常消費生活に、おなじみのものになってきたことを象徴するものとして興味深く思います。」(同通信)
 水と炭酸ガスと砂糖と若干の香料から作り上げる清涼飲料水のプロトタイプ(祖型あるいは原型)ともいうべきサイダーが、物価政策上もう重きを置かれない(人々が余り購入しない→その価格は、国民の消費生活に大きな影響を与えない。)とされたわけです。
 代って、砂糖を含まない清涼飲料水で水のみを原料とするもの=ミネラルウォーターが、価格調査の対象とされたのです。
 かつて、イザヤ・ベンダサン氏が、『「安全」と並んで日本ではタダと思われている。』と書いた「水」が、価格調査の対象となったのです。
 「安全」にも、今や金のかかるようになった時代、色々思うことがありますが、本題からは離れますので、取り敢えず事実の指摘のみにとどめておきましょう。
 もう一つコーヒー飲料(正にこの年シェア2位となった。)が対象品目として追加されたことも併せ、考えに入れると、清涼飲料需要の多様化(単純にバラエティーが増えるという意)と、その方向性が、こんなところにも象徴的に反映されているなとの感を深くします。
 清涼飲料の今後を占う上での、そして清涼飲料と砂糖(少なくとも甘味料)との関わりの今後を推し測る上でも参考になる画期的なエピソードとして、記憶にとどめていただきたいと思います。

(注)コーヒー飲料は、未だ砂糖入りのものが主流ですが、無糖、微糖などの製品も現れてきており、今後の甘味離れや砂糖離れがどうなるか?
 先行きは不透明と言わざるを得ません。
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2.砂糖離れを示したのは、この前から
 前述の「清飲通信」の記事では、この調査対象品目の変遷を、きめ細かく追って(遡って)おり、それを読むと、価格調査の面に現れたものだけ見ても、清涼飲料水の砂糖離れの現象の一端は、以前にも、既に見られます。
 1995年の改定で、ウーロン茶飲料が追加されました。これが、砂糖・甘味離れを示す第一号でしょう。
 1981年の野菜ジュース(トマトジュース)の追加も(もともと砂糖を必要としないものなので異論あるやもしれませんが)見方によれば、そうかもしれません。

 以下、このような変遷・推移を、図を中心にもう少し分かり易く、かつ、砂糖との関わりに少し光を当てつつ、お示ししてみようと思います。
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3.でもその前にもう一度 清涼飲料水とは?
 1でお示ししたように、また、皆様の経験にあるように、実は、昔は、清涼飲料水といったら、それこそ、サイダー(或いはラムネ)しかなかったのです。
 終戦の年に生まれた筆者にとって、幼い頃、旅行にでも出て、旅館で親の許しを得てサイダーでも出してもらえるなら、もう大喜び。そこにバヤリースオレンジ(100%ジュースなど夢想も出来なかった!!)の一本も付けられていて、キッチリ分量を量りながらサイダーと混ぜ(私家版ファンタオレンジ)、いい味などと悦に入ったりしていたのを思い出すぐらいです。
 筆者の話など、何の権威もありません。
 そこで、古川緑波(ロッパ)氏の「ロッパの悲食記」(1995年ちくま文庫―オリジナルは、もっと相当昔のはず)中に、それもズバリ「清涼飲料」と題する一章を見付け、少し飲用(マチガエました引用!!)する次第。
 サイダーの広告などに触れた後、「清涼飲料という名前は、うまいなぁ。如何にも、サイダーが沸騰(筆者注・原文のママ)して、コップの外へ、ポンポンと小さな泡を飛ばす有様が浮かんでくるようだ。(中略・筆者)その頃、洋食屋でも、料理屋でも、酒を飲めないものには必ず、「サイダーを」と言ってポンと抜かれたものである。」と書き継いでいる。
 更に「ラムネ」をなつかしみ、当時コカコラと発音されていたコカコーラに言及してこの一章を終わっています。
 そう、清涼飲料と言ったら、ラムネやサイダーが本流(というか、殆んどそれしかなかった。)だったのでした。それなのに…
 ちなみに、「清涼飲料とは、清涼感を与え、ノドのかわきをいやすのに最も適した飲料で、甘味とフレーバー(味や香り)がありアルコール飲料を除く飲料をいう。」((社)清涼飲料工業会『清涼飲料の常識』)とされています。
 従って、本来甘味(砂糖を含む。)は必須要件なのですが…
 勿論、これは、歴史的伝統的に工業会が言いならわしてきたものであり、食品衛生法上は、「乳酸菌飲料、乳及び乳飲料を除く酒精(アルコール)分1%未満を含有する(筆者注:含有しなくてもよい。普通殆んど含有しない。)飲料をいうものである。」とされて、ネガティヴリスト的に整理されているので、無甘味でも(したがって無糖でも)、ミネラルウォーターのように無フレーバーでも、清涼飲料水の範ちゅうであることは、間違いないのです。
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4.清涼飲料の変遷と推移
 さて、イマとムカシ(原点)を、印象的な部分のみ、つまみ食い的にお示ししましたが、もう少し詳しく眺めてみることとしましょう。
 「はじめに」で申し上げた手がかりがつかめればいいのですが…
 そのためには、平成14年工業会で取りまとめた調査報告「清涼飲料の商品変遷とこれからの方向性」を、よく見、読んでいただくのが一番なのですが、取り急ぎその中の図を用い、それに若干のコメントを付していくのがよいかと思います。御関心の向きは、冊子をとり寄せ全文お読み下さい。

 それでは、先ず「清涼飲料と市場の変化」(図-3)を見ていきましょう。
図-3 清涼飲料と市場の変化(昭和30年(1995)〜平成12年(2000))
図-3
(1) I 期
 第 I 期の初め、昭和30年の総生産は、未だ100万klにも達していない。食べるに追われて、嗜好品にまで需要が及ばなかったと見るべきでしょう。
 甘味には飢えていた時代、戦前にはなかったと言われるアンミツの出現のように甘ければ甘いほどうまいと感じたような時代でした。
 前述の筆者の子供時代、サイダーが清涼飲料として消費生活に確固たる位置を占めていた頃から始まる一時期です。
 戦後復興から高度成長へ向かわんかということを示すかの如く、(企業戦士の活力の素となる)栄養飲料が登場したり、より高品質の果汁飲料の需要増加など、次のステップへの芽がうかがわれる15年間とも言えましょう。勿論、量的拡大は著しく I 期末から II 期の初めの頃には、3.5倍になっています。
 これを、もう少しダイナミックに、きめ細かく図示すると図-4のようなことになりましょうか。
 ダイナミズムの下に掲げた主な出来事も、要注目です。
 この間の品目別の生産量の推移は、図-5のとおりです。
 図-1に比べると、スッキリ、種類も少なく、分り易い時代であったと言えましょう。甘味料や砂糖を不要とする飲料はなく、使用量を減らそうという動きも見られず、砂糖(少なくとも甘味料)への需要は、まだまだ強い時代だったと位置付けられるでしょう。
図-4 外国系飲料の進出と市場変化の時代
図-4
図-5 清涼飲料の品目別生産量(昭和31年(1956)〜昭和45年(1970))
図-5
(2) II 期
 順調な伸びを続け、15年間で、ほぼ倍増の約600万klまで持ち上げることが出来ました。図-6にあるように、色々な萌芽は出てきましたが、それが未だ爆発にまで至っていないというステージであったと言えましょう。
 注目すべきは、甘味(砂糖)離れの兆しとしてのウーロン茶(当然ながら無糖!!)の登場でしょう。
 同時期、同じ半発酵茶である紅茶飲料が登場しましたが、こちらは未だ無糖という形態は出現しておらず、未だ甘味離れや砂糖離れにまでは、至っていません。
 より細かく図-6を見ていきましょう。
 自販機の増加とそこにおけるコーヒー飲料の販売拡大(この頃未だブラックや微糖はほとんどない。)は、なお、清涼飲料と甘味・砂糖の幸せな共生関係を維持するに、大きな力があったのではないかとみられます。

 品目別生産量については、図-7を御覧を。
 I期の図-5の4品目に対し、「その他」を含め新たに4品目が登場し、多様化の芽が、そして多分、甘味離れの芽が出始めたと言っていいでしょう。
図-6 清涼飲料の品目別生産量(昭和46年(1961)〜昭和60年(1985))
図-6
図-7 清涼飲料の品目別生産量(昭和46年(1971)〜昭和60年(1985))
図-7
(3) III 期
 最初にお示しした図-1が多様化、商品カテゴリィの消長などの全てを語ってくれています。無糖茶やミネラルウォーターの増大以外にも、コーヒー飲料では、ブラックや微糖も色々に、その他の飲料でも、「余り甘くなくておいしい」というようなコンセプトが出盛り、甘味離れは、大きく進んでいるとみられます。
 このイメージについて、きめ細かくは、図-8を御覧ください。無糖飲料への言及が4流、有糖飲料(炭酸飲料)の横ばいについて1流と、甘味料及び砂糖にとっては嘆かわしい状況です。更に機能性飲料の甘味料が砂糖でない可能性は十分高く、結局全て砂糖にとっては望ましくない流れとなっています。
 なお、量やシェアの動きについては、また図-1に戻って見直してみて下さい。
図-8 清涼飲料の本格的多様化と新たな展開の時代
図−8
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おわりに ― 蛇足かもしれないが
 来るべきところまで来たというのか、はたまた、この傾向で、清涼飲料の甘味離れは益々進むのか?  なかなか難しいところがあります。
 デザートやスウィーツといった分野で甘味への欲求を満たそうということになれば、飲料に於ては甘味離れが益々進むでしょう。
甘味離れは進まないまでも、カロリー計算等から、砂糖以外の甘味料へのシフトがあるかもしれません。
 図-3に示したように清涼飲料全体がどう進むのかも、「?」です。
 しかし、あらゆるところに、この「?」があるからこそ、新しいビジネスチャンスがあるのではないでしょうか?
 冒頭お断りしたように何の結論も出しませんというか、出せないのです。着目点、視点、観点は色々お示し出来たかと思います。本稿から、砂糖業界が何か一つでもヒントや手掛りを得て頂くことを期待して、筆をおきます。
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「今月の視点」 
2004年9月 
清涼飲料水と砂糖 〜甘味離れ? 砂糖離れ?〜
 前(社)全国清涼飲料工業会専務理事
 (現 農林水産政策情報センター 調査局 調査役)  芳田 誠一

「サイトカイン産生量を指標とした砂糖の腸管免疫系への影響」
(平成15年度砂糖に関する学術調査報告から)

 千葉大学大学院薬学研究院 教授 戸井田 敏彦 ・ 助手 酒井 信夫


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