[2004年7月]
沖縄県農林水産部糖業農産課
1 沖縄県におけるさとうきびの現状
さとうきびは、沖縄県の全地域で栽培され全耕地面積の約50%、栽培農家数は18,741戸と全農家数の約71%を占めている。また、平成14年度の農業産出額でも約169億円で18.3%を占め基幹作物と位置付けられている。しかしながら、栽培農家は近年減少傾向にあり、特に沖縄本島地域での減少傾向が大きい。また、栽培農家の経営規模は、本島地域で9割以上、離島地域で6割以上、県平均で約8割が1ha以下となっている。平成15年は、さとうきび生産法人等による農地集積の影響もあり離島地域に
おいて規模拡大が図られている。
経営規模別農家戸数
資料:「さとうきび及び甘しゃ糖生産実績」
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さとうきび収穫面積は、農家の高齢化、担い手の減少、耕作放棄地の増加等により減少傾向にあったが、春植・株出体系の推進、さとうきび・糖業再活性化事業による遊休農地解消等の効果もあり、近年は減少傾向に歯止めがかかったものと考えられる。
単収は、もともと高単収の地域である沖縄本島における収穫面積の減少もあり県平均は低下傾向にある。中でも本島地域では低下が大きく、離島地域では横ばいもしくは微増傾向にある。
さとうきび収穫機械化率は年々上昇しており、さとうきび生産コストは、その大部分を占めている労働費の低減とともに徐々に低減してきている。
2 さとうきび生産振興方針
(1)沖縄県農林水産業振興計画
平成14年度から平成23年度までの10カ年計画である沖縄振興計画が、平成14年7月に国により策定され、沖縄県では、同計画を踏まえつつ、農林水産業・農山漁村分野について、地域特性を生かした振興を図るためのアクションプランとして沖縄県農林水産業振興計画を策定した。
沖縄県農林水産業振興計画は、平成14年度から平成16年度の3カ年計画であり、さとうきびについては、担い手への農地集積による経営規模の拡大、農業生産法人や受託組織の育成、機械化一貫作業体系の導入などにより、生産コストの低減を図るとともに、生産の維持増大を図ることとしている。
沖縄県農林水産業振興計画では収穫面積の拡大、単収の向上により、目標の16年度に95万トンを達成する計画であり、平成18年度に100万トンを目標としている。
農林水産業振興計画
注:栽培面積は次年度夏植収穫面積及び推定採苗面積、収穫放棄面積を含む
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(2)平成16年さとうきび生産振興計画
ここ数年は、天候不良の影響を強く受け、過去10年の単収の平均は6.4トンと低い状況にあり、生産量は低迷している。このため、平成16年は、目標を93万1千トンに設定し、その達成に向け各種振興策を積極的に推進する。
平成16年度作型別生産計画
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[1] 生産振興の基本方針
さとうきびの生産振興を図るため、かんがい施設等の生産基盤の整備をはじめ、機械化の促進、土づくり、病害虫防除対策等の諸施策を総合的に推進するとともに、優良品種の開発・普及等により生産性及び品質の向上を図る。
また、経営規模の拡大及び耕作放棄地の解消へ向けた農地流動化対策を強化するとともに、作業受託組織の育成及びさとうきび生産法人等担い手の育成を促進する。
さらに、さとうきびの生産振興、製糖工場の操業率向上を図るため、市町村、農協、製糖工場等の関係者が一体となって、新たな対策であるさとうきび・糖業安定生産促進緊急対策事業の効果的な実施に努める。
[2] 重点施策
ア 農業生産基盤の整備
ほ場整備を推進するとともに、干ばつの影響を受けやすい地域において、ため池、地下ダムを水源とするかんがい施設の導入を推進する。
イ 農地の利用集積と経営規模拡大
経営規模拡大については、県、市町村、農業委員会等の関係機関や農業開発公社、農協等農地保有合理化法人による農地の流動化により、担い手農家への利用集積を図る。また、農業機械銀行、コントラクター方式等による農作業受委託を促進する。
ウ 機械化一貫作業体系の推進
地域の実情に即したハーベスタ等の農業機械の導入及び集中脱葉施設の利用の促進を図りつつ、収穫作業の省力化を推進するとともに、新たに開発した植付機、株出管理機の導入等による植付作業、株出管理作業の省力化を推進する。併せて、農業機械利用技能者の養成を図るなど、低コスト機械化一貫作業体系を促進する。
エ 優良種苗の開発、増殖及び普及
早期高糖多収性品種の開発・育成を行うとともに、種苗管理センターとの連携の下に、原苗ほ及び採苗ほを設置し、無病健全な優良種苗を計画的に増殖し、普及に努める。
また、新たに北部及び久米島向けとして奨励品種になった農林16号、17号の増殖・普及を図るとともに、平成14年度から実施している農林15号緊急増殖事業により、農林15号の側枝苗を緊急増殖(23万本)し農家への早期普及を図る。
オ 土づくりの推進等
製糖企業及び畜産農家との連携のもとに、トラッシュ、バガス、ケーキ、畜産排泄物等を原料とした有機質肥料の畑地への還元及び緑肥作物栽培による地力の増進を促進する。全茎無脱葉原料が増加したことにより農地への有機物の還元が減少していることから、これまで国庫事業等により設置した堆肥製造施設等で製造した堆肥の投入を励行する。また、深耕・心土破砕の展示ほを設置して、さとうきび栽培農家への肥培管理技術の普及促進を図る。
カ 病害虫防除対策
病害虫防除については、適期防除の推進と市町村における防除組織の育成により共同防除を促進する。土壌害虫の防除については、薬剤による幼虫防除と併せて、性フェロモン及び誘殺灯による成虫誘殺防除、交信攪乱による防除、及び耕種的防除を組み合わせた総合的な防除技術の確立を図る。また、宮古・八重山地域で被害を与えているサキシマカンシャクシコメツキの不妊虫放飼による防除技術の開発に取り組む。
近年多発傾向にある黒穂病については、罹病株の抜き取り焼却の周知徹底を図るとともに、感受性品種である農林9号(Ni9)から他の抵抗性品種への切り替えによる防除対策を実施する。
キ 営農改善の推進
葉たばこ及び野菜等との輪作や、肉用牛との複合化を促進する。また、集落営農等、効率的な営農体型の確立・普及に努める。
ク 経営感覚に優れた担い手の育成
認定農業者や借地型大規模経営体である生産法人等、多様なさとうきび作担い手の育成・確保を図る。
ケ さとうきび・糖業安定生産緊急促進対策事業の推進
生産者をはじめ、市町村、農協及び製糖企業等の関係機関が一体となって、効果的な生産振興対策等を実施し、生産振興の目標達成に努める。
コ 農業共済の加入促進
生産農家の経営安定を図るため、農業共済団体、市町村等関係機関との連携の下で、農業共済制度の普及・啓発を図り、農業共済への加入を促進する。
昨年度に引き続き、今年度も各種事業説明会等を活用し、農業共済への加入促進に努める。