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砂糖についての大学生・母親アンケートから

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2004年10月]

【調査・報告〔消費者意識〕】

 平成16年4月下旬に、岡部教授が女子学生とその母親を対象に、砂糖をめぐる情報をどのように判断しているのか、前回の質問項目に新たな項目を加え、いろいろな角度からアンケート調査を実施されたので紹介します。

滋賀大学名誉教授  岡部 昭二


はじめに
調査結果と考察
  I 砂糖に関する諸情報に対する自分の考え
  II 「カップ1杯のコーヒーや紅茶に砂糖を入れて飲みますか」
まとめ


1. はじめに
 平成9年から毎年、女子学生とその母親に対して、砂糖やその関連商品についてアンケートを行って、その動向を「砂糖類情報」に掲載してきた。
 前回は、平成15年4月下旬に調査を実施し、砂糖をめぐる情報源がどのように砂糖のメリットやデメリットを伝え、それに対して大学生やその母親がどう反応しているかについて調査を行ったところ、その結果、情報源としては、テレビ・ラジオが多く、「砂糖は肥満や糖尿病を招く」といった俗説にとらわれている者が多い結果となった。他方、「砂糖が脳のエネルギー源になる」という情報は、かなり良く浸透していた。また、「カップ1杯のコーヒーや紅茶に砂糖を入れて飲みますか」の調査では「コーヒーや紅茶に何も入れない」とする者は最も多いながら、その率は過去2回のアンケートに比べて明らかに下がっている結果となった(2004年2月号掲載)。
 今回は多くの砂糖をめぐる情報をどう判断しているのか、「砂糖を摂ると心が和む」、「疲れた時は砂糖の摂取が効果的である」など新たな項目を加え調査した。また、砂糖消費の推移の一端を知る目的で「カップ1杯のコーヒーや紅茶に砂糖をどのくらい入れて飲みますか」も併せて継続調査をすることにした。
調査時期   平成16年4月下旬
調査対象 女子大学生
学生の母親
合  計
 107名
 91名
 198名
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調査の結果と考察

I 砂糖に関する諸情報に対する自分の考え

1.「砂糖を摂ると太る」
 砂糖の俗説の中でも最も信じている者が多いとされている。実際、学生、母親共に、これを肯定する者が否定する者より明らかに多く、肯定は学生61%、母親49%であった。昨年同様母親のほうが肯定している率は少ない。ただし、両者、肯定する率は、昨年に比べ確かに低くなっていることは、徐々にではあるが、砂糖についての正しい知識の普及の効果があったのではなかろうか。
グラフ1

2.「砂糖を摂ると糖尿病になる」
 学生は「はい」が44%、「いいえ」が20%に対し、母親は「はい」が24%、「いいえ」が35%で、母親のほうが前問同様学生よりも正しい知識を持っている。
グラフ2

3.「砂糖を摂るとキレル」
 一時ある大学教師のこの考えが新聞紙上をにぎあわせ、議論を呼んだものであった。学生は「はい」がわずか6%、そして「いいえ」が68%となった。母親は「はい」12%、「いいえ」が62%で、両者同様な傾向を示した。多くの者は健全な考えを持っていると言えよう。
グラフ3

4.「砂糖を摂ると虫歯になる」
 学生に「はい」は58%、「いいえ」が22%、母親の「はい」が42%、「いいえ」が30%であった。
グラフ4

5.「砂糖はカルシウムを奪う」
 学生は「はい」が21%、「いいえ」が26%であるが、「分からない」が最も多く46%になった。母親は「はい」が34%、「いいえ」が20%、「分からない」が24%であった。
グラフ5

6.「砂糖を摂ると心が和む」
 「はい」は学生66%、母親は65%でほぼ3分の2が肯定している。
グラフ6

7.「砂糖は脳のエネルギー源になる」
 「はい」は学生74%、母親は63%で、予想に反して、母親の率のほうが低かった。なお、「いいえ」は学生1%、母親4%であり、「分からない」は学生17%、母親18%であった。重要な事柄だけに一層の啓発が望まれる。
グラフ7

8.「砂糖を摂ると記憶力が向上する」
 この設問は前問と関係はあるが、特に取り上げて話題になったことはなく、記憶力の向上についてはDHAが有名であるためか「はい」は学生39%、「分からない」が42%、母親は「はい」が35%、「分からない」が24%という結果を得た。
グラフ8

9.「疲れたときは砂糖の摂取が効果的である」
 この設問は経験から学んでいると考えられる。学生の「はい」は83%、「いいえ」はわずか3%、母親は「はい」が87%、「いいえ」が2%で、両者同様の傾向を示した。
グラフ9

10.「砂糖は酸性食品である」
 学生は「はい」が6%、「いいえ」が21%、「分からない」が60%、母親は「はい」が22%、「いいえ」が16%、「分からない」が41%となった。以前と異なり、最近は「酸性食品はからだを酸性にするから悪く、野菜のようなアルカリ性食品を摂らなければならない」との俗説があまり聞かれなくなったためか、学生は「酸性食品」自体何を意味するか知らないと思われたので、追跡調査をした。その結果、中には「骨を溶かすもの」、「pHの低いもの」という答えもあったが、全く「分からない」という者と「酸性食品」の定義を知っている者とが多数であり、ほぼ半々であった。
グラフ10

11.「砂糖は骨を溶かす」
 この古い俗説に対しては、学生の「はい」は22%、母親のそれは21%で同様であった。しかし、学生は「分からない」が最も多く35%、「いいえ」が33%であった。これに対し、母親の「分からない」は27%、「いいえ」が40%であり、母親の知識のほうが学生より良いという予想外の結果を得た。学生は、聞いたことのないものに対しての考える力が弱いのではないかと思われた。
グラフ11

12.「黒砂糖は健康に良い」
 学生の「はい」は76%、「いいえ」が0%、「分からない」が12%あった。母親は「はい」が89%で今回の設問中最高の率であった。なお、「いいえ」は3%、「分からない」は1%で少数であった。
グラフ12

13.「白砂糖は漂白している」
 これも良く聞かれる俗説であるが、学生は「はい」が12%と少なくさすがであるが、「分からない」が最高の49%であることが気になる。母親は「はい」が過半数の52%に及び、「分からない」は19%、正しく「いいえ」と答えた者は24%であった。後日、アンケートの結果・考察を学生にプリントして渡し感想を求めたところ、「砂糖は漂白しているといっていつも私を馬鹿にしている母親にこのプリントを見せて、見返してやりたい」というのがあった。
グラフ13

14.「健康のためには白砂糖よりはなるべく三温糖を使う」
 学生は「はい」41%、「分からない」38%に対し、母親は「はい」が69%と多く、「分からない」は僅か4%となった。三温糖は粗製であるためからだに良いと思っている母親が多い。
グラフ14

15.「砂糖は化学合成品である」
 学生の「はい」は僅か7%であるのは心強いが、「分からない」が62%もあるということは困ったことである。母親は「はい」が21%、「分からない」が33%と学生との相違が認められた。なお、「いいえ」は学生24%に対し母親は37%であるから、どちらが良いとは直ちには言えないが、母親の5人に1人は「色が白いから化学合成品」と思っているのは問題である。
グラフ15

16.「砂糖には賞味期限がある」
 学生は「はい」58%、次いで「分からない」が21%、母親は「はい」が40%、次いで、「分からない」の30%であった。母親のほうが若干良いものの、砂糖に賞味期限があると思っている者が意外に多い。
グラフ16
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II 「カップ1杯のコーヒーや紅茶に砂糖を入れて飲みますか」
 例年、「何も入れない」の答えが多かった。今回の調査でも学生は「何も入れない」が多く37%、次いで「1杯」の10%であった。母親も同じく最も多かったのは「何も入れない」で60%もあり、学生より明らかに多かった。次いで「1杯」であり、この点学生と変わりがなかった。昨年の調査では「何も入れない」が学生、母親各33%、39%であったので、今回は母親の増加が目立った。次にその理由を尋ねたところ、学生はその75%が「風味が良いから」、次に30%が「肥満」であった。重複回答のため合計は100%ではない。母親の場合、「風味が良いから」はその67%であった。次いで「肥満」は34%で、昨年に比べて順位は同じであるが、母親の「風味が良いから」の率が少し下がり、「肥満」が少し増した。
グラフ17
グラフ18
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「まとめ」

 砂糖に関する俗説の「砂糖を摂ると太る」は学生、母親共に「はい」が最も多く、「砂糖を摂ると糖尿病になる」は、昨年に比べ学生が20%減、母親が22%の減となっており、母親は半減して選択肢の3位に下がった。「白砂糖は漂白している」は、学生では「はい」が半減し、母親は若干増加した。このように、この度の調査では、昨年の調査と結果に異なる点が見当たる。しかし、一般に学生も母親もまだ砂糖についての正しい知識を有しているとはとても言えない。ただ、「砂糖は脳のエネルギー源である」については、学生は昨年同様74%と多かった。また、母親は昨年に比べ14%減少したもののかなりよく浸透していると言える。
 「コーヒーや紅茶に砂糖を入れて飲みますか」では「何も入れない」が従来と同様最も多く、その理由は「風味が良いから」が1位であることには変わりはないが、昨年に比べ、若干の率の変動が認められた。
 以上、砂糖の誤った俗説は、なかなか払拭できないが、「砂糖は脳のエネルギー源である」はかなり浸透しているので、あらゆる機会を通して、啓発に一層の努力をすることが望まれる。
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「今月の視点」 
2004年10月 
砂糖の適時・適正摂取は身体の働きにどのように影響するか
 女子栄養大学 助教授 上西 一弘  石田裕美  庄司伸絵
慢性関節リウマチのモデル動物を用いた病態発症に対する
 黒糖摂取の効果について
(平成15年度砂糖に関する学術調査報告から)
 鹿児島大学理学部生命化学科 助教授 笠井 聖仙
砂糖についての大学生・母親アンケートから
 滋賀大学名誉教授 岡部 昭二


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